シティ(シティ・オブ・ロンドンシティ)には英国中、延いては世界中の富が集まる。わずか約1マイル(1.6km)四方の土地にすぎないが、莫大な富と世界の頭脳が集結する場所であり、起業を夢見る数多の者たちの願いを叶えてきた場所でもある。
シティは名実ともに世界の金融センターであり、世界のトップ企業500社の3分の1以上が欧州本部をここに置いている。世界中の銀行や金融機関のほぼすべてがここにオフィスや支店を構えているというわけだ。
また、ここは世界最大の外国為替市場であり、世界の一流法律事務所の3分の2が集まる場所でもある。さらに、首都ロンドンの10分の1にあたる雇用を生み出し、毎年1000社以上ものベンチャー企業が産声を上げる場所でもある。
記者がシティを訪ねたのは、ちょうど英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる初の交渉会合が始まった頃だった。この頃、一部メディアは「EU離脱に伴う不確実性の高まりで、シティは痛手を受ける」との見方を報じていた。EU離脱後に英国と欧州との間に金融・貿易の壁が生じる恐れがあり、これを避けるため、欧州の金融機関の中にはシティから撤退して独フランクフルトなどの大陸の都市に拠点を移すケースも出てくるだろうとする見方もあった。