だが、こうした予測は当たらなかった。シティが凄まじい勢いで衰退することはなかった。ロンドンから撤退すると噂のあったドイツ銀行などの金融機関は、逆に資産管理業務を開拓する意向を示し、英国市場のポテンシャルを十分に掘り起こす考えを明らかにしたのだった。
シティの政府関係者のほぼ誰もが「シティは欧州の金融センターではなく世界の金融センターだ」と強調する。特に、EU離脱を背景に、中国を含むアジア・太平洋地域のシティに対する重要性が一段と高まっていると指摘する。ロンドン金融街では「ロンドン人はEU離脱を語り、アジア人は商売の話をする」という言葉が広まっているほどだ。
中国大陸、香港、シンガポールなどのアジア太平洋地域の投資家らのシティでの活躍ぶりはこの5年間で最も高まり、中国資本はこの数年間でシティを代表する数多のランドマークタワーを買収してきた。過去には、ロシア、日本、中東の巨額資本がこの地に投下されてきたが、シティ人の言葉を借りれば、今は「中国の時代」が来ているという。