今回のブランド譲渡が決まると、業界関係者からは、「今現在、日本の電子産業には一体何が残っているのだろう」とため息交じりの声が聞こえてきた。近年、日本の老舗電子メーカーは生き残りをかけ、傘下のブランドや事業を次々に売却し、中国企業に買収されたメーカーも多い。美的集団は東芝の白物家電事業の株式の80%を買収し、40年間のブランド使用権も得た。長虹電器はパナソニック傘下の三洋電機のテレビ事業を買収し、海爾(ハイアール)は三洋の白物家電事業を買収し、台湾地区の鴻海科技集団はシャープを買収した。このように振り返ると、1990年代の日本のテレビ6大メーカーのうち、4メーカーの家電事業を中国企業が手がけるようになっており、その他の老舗電子企業の現状も推して知るべしだ。
かつて世界を席巻した日本の家電ブランドが、今や軒並み損失、リストラ、買収の苦境に直面している。当然のことながら、現在は家電産業の利益が大きくないため、日本企業はブランドを売り渡し、自らモデル転換を行って活路を見いだそうとしているが、こうした選択は日本企業全体が大きく敗退した状況にあるということを意味しない。とはいえ、日本家電産業は日本製造業の重要な柱であり、ブランドの没落が日本製造業衰退の真実の写し絵であることは間違いない。
家電ブランドの買収より、日本製造業にとってもっと深刻なのは、ここ数年たびたび伝えられる不正問題だ。最近発覚し、まだ終わりがみえない神戸製鋼所の検査データ改ざん問題は、世界の自動車・航空機メーカーの供給チェーンに激震をもたらし、社会の各方面では新幹線、航空機、自動車の安全性への懸念が高まった。自動車製造業では、日産が過去20年あまりにわたって、無資格従業員に安全性の最終確認となる完成検査を行わせていたことが発覚し、スバルも同様に無資格検査の行われる状況が30年以上も続いていたことが明らかになった。他に発覚した不正問題には、三菱自動車による燃費試験でのデータ不正問題、タカタのエアバッグの欠陥による死亡事故などがある。よく知られた日本企業で次々と不祥事が発覚し、「精密であり精良である」という日本製造業の伝統的イメージが損なわれ、日本製造業は高い位置から引きずり下ろされ、衰退の淵に押しやられている。