経済協力開発機構(OECD)はこのほど発表したリポートで、「中国以外の地域の生産能力過剰問題が世界の鉄鋼業の回復に影を落としている」と警告した。国際評論家は「鉄鋼業などの生産能力過剰は世界的な問題だ。ここ2年で中国が生産能力削減に取り組んだことで、世界の鉄鋼業は生産能力過剰による低迷から回復に向かった。各国は今後も意思疎通と協力を強化し、一体となって生産能力過剰問題に対処すべきだ」との見方を示した。
OECD鉄鋼委員会のリポートによると、2017年上半期の世界の鉄鋼生産能力は23.6億トンで、前年同期の23.7億トンからわずか0.6%減少した。うち、中東、南米、EU以外の欧州諸国の鉄鋼生産能力は顕著に拡大した。OECD鉄鋼委員会のLieven Top議長は「過剰生産能力は憂慮すべきほど高い水準にある」と指摘した。
リポートは、「2017~2019年にかけて、世界の鉄鋼生産能力は約4000万トン増加する。うち、中東地区は約2300万トン増加する」との見通しを示した。
米金属市場調査会社のAlistair Ramsayマネージャーは、「どの地域でも鉄鋼生産能力が増加すれば、今後の鉄鋼価格と利益に大きなリスクをもたらす可能性がある」と指摘する。
OECDのリポートによれば、世界の鉄鋼需要はやや回復する見込みだが、現在の生産能力過剰分を完全に消化できるほどではないもようだ。英商品研究所のKris Holdenアナリストは「世界の需要は、新しい生産能力に見合うほど伸びない」と予測した。
日本の愛知大学国際中国学研究センターで客員研究員を務める李博氏は新華社の取材に対して、「世界の生産能力過剰の問題は非常に厳しい状況にある。主に鉄鋼、非鉄金属、ゴムなど原材料加工を中心とした伝統産業に集中しており、新興市場や発展途上国に多くみられる」と語った。