日中経済協会 調査部長 高見澤学
第13期全国人民代表大会第1回会議は5日午前9時、人民大会堂で開幕し、李克強総理が政府活動報告を行った。李克強総理は報告の中で、「的確な貧困脱却にさらに力を入れる。今年は農村貧困人口をさらに1000万人以上減少させる」と述べた。
2018年は改革開放40周年の記念すべき節目の年である。改革開放以来、「貧困問題」は「環境問題」や「三農問題」と伴に中国政府にとって解決すべき重要課題の一つになってきた。この40年の間、中国は急速な経済発展を遂げ、国民生活も総体的に著しく向上し、更なる高い生活水準を目指そうとしている中で、貧困対策も最終段階を迎えていると言えよう。
「2020年までに我が国の現行基準の下での農村貧困人口の貧困脱却を実現する、これは我々の確固たる公約であり、約束に対しては責任を取る」。これは習近平国家主席が年頭の辞において強調した貧困対策の解決に向けた決意の表明である。2020年までの残り3年間で、中華民族数千年の歴史と発展の中で初めて実現する絶対的貧困を撲滅するという歴史的戦いの勝利であるとの認識の下、ラストスパートはより加速されていくに違いない。
2015年から始まった第13次五カ年計画では、2020年までに絶対貧困者の全員貧困脱却を実現するという大きな目標が掲げられている。昨年12月に北京で開催された「中央経済工作会議」では、今後3年間の重点施策として、①重大なリスク回避、②貧困脱却、③環境汚染防止の3点が挙げられた。貧困脱却の具体的施策としては、現行の貧困規定の基準を維持し、基準を下げることやばら撒きは行わず、特定の貧困層に的を絞り、貧困層の内在的エネルギーを活性化するとしている。
この施策の中で最も重要な点は、「貧困層の内在的エネルギーの活性化」にあると考えられる。確かに、一時的な補助金を拠出して応急的な経済支援等が必要な場合もある。しかし、貧困だからといって、単に経済的な施しを与えるだけでは、たとえその場の空腹を満足させることはできたとしても、結局のところその後が続かない。貧困層一人一人が自らの生活が貧困であるという現実を自覚し、そこから脱却して更に成長しようとする意識を高め、そのための現実的な手段を講じることが重要なのである。つまり、貧困対策においても、経済発展と同じよう持続可能な対策が求められるのである。