EUとの貿易戦争を一時停戦、米国のその場しのぎに

EUとの貿易戦争を一時停戦、米国のその場しのぎに。

タグ:EU 米国 貿易戦争

発信時間:2018-07-27 15:10:48 | チャイナネット | 編集者にメールを送る


 米国のトランプ大統領と欧州委員会のユンケル委員長が現地時間25日午後、ホワイトハウスで共同記者会見を開いた。協議を通じ双方の貿易障壁を引き下げ、貿易摩擦を解消し、相手国の商品に対する新たな追加関税発動を一時停止すると宣言した。米国とEUが経済・貿易問題で握手し、和解に向かうという観測が一時広がった。しかしトランプ政権は今回、本当に約束を守るのだろうか。


 まず米国とEUは、関税と貿易障壁の撤廃に取り組み、自動車以外の製品に対する補助金支給を停止すると表明した。新たな協議を開始し、鉄鋼・アルミ製品の関税や各種報復措置の問題を解消し、エネルギー協力を強化するとした。


 念入りに分析すると、これらは方向性と態度を示す表現であり、実施の日程表、詳細な内容、解決策などが示されていない。米国側は協定の中で、EUの鉄鋼・アルミ製品への追加関税を停止することに合意していない。特にEUが最も関心を寄せる自動車関税問題について、トランプ氏は「ベンツがニューヨーク5番街を走れなくする」と発言したことがあるが、協定内には自動車関税問題の解決に向けた具体的な約束が含まれない。これはトランプ氏が依然としてEUの「急所」を握り、いつでも自動車関税を発動できることを意味する。それならばこのような協定に公平性はなく、双方が相互信頼できるわけがない。


 次に、トランプ政権は欧州に「関税撤廃」を提案したが、これは独創的なものではなく使い回しに過ぎない。オバマ時代に米国とEUが「大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)」の協議を行った際に、双方は輸入品97%以上の関税を撤廃すると提案していた。しかし双方が政府調達、農産物市場の進出、金融の監督管理などで大きな食い違いを残していたため、協議に重大な進展はなかった。現在は米国の中間選挙まであと4カ月となっているが、票集めを最優先するトランプ政権が協議を通じ、EUと自動車以外の工業製品の補助金停止の目標を実現する時間と忍耐は残されているのだろうか。


 それから、EUは計28カ国で、各国の発展の程度が異なっている。米国との貿易摩擦問題をめぐる態度にも差がある。徹底対抗の姿勢を示す国があれば、妥協し戦いを回避する声もある。ユンケル氏はEUの「CEO」であり、欧州の政治で重要な地位を占めている。しかしトランプ氏と最終的な合意に至るためには、EU各国首脳の承認を得る必要がある。一人でもEUの首脳が反対意見を持ち、トランプ氏に無礼な発言をすれば、協議全体の流れに大きな揺れが生じる。


 ユンケル氏は米国からの天然ガスの輸入拡大の前提条件として、「条件が許し、(米国の)価格も競争力を備えるならば……」と発言した。それではこの条件とは何だろうか。最も重要なのは当然ながら、EU内部で米国の天然ガスの輸入を拡大する共通認識を形成することだ。米国の天然ガスの価格について、米国企業はアジアに輸出する方が利益になる。欧州が提示する天然ガスの輸入価格がアジアを上回れば、支払う費用はロシアから輸入する場合を大きく上回り、一部の欧州諸国はこれに耐えられなくなる。ユンケル氏が言及したこの2つの前提は、実行が困難だ。


 米国とEUは追加関税の発動を一時停止することで合意したが、これは一つの姿勢を示したに過ぎない。米国はEUに照準を合わせた貿易の銃を下ろしておらず、一時しのぎの策を講じ、より高い値をつけようとしている。しかもトランプ氏が態度を変える可能性が残されている。ワシントン・ポストによると、トランプ氏の経済チームの相談役はユンケル氏との会談前、トランプ氏が総額2000億ドルの輸入車に25%の追加関税を導入すると宣言すると考えていたが、ユンケル氏と握手したという情報が伝わった。これほど態度を二転三転させ予想し難いため、英ガーディアン紙が「トランプ氏は信頼できる取引相手ではない」と論じたのも無理はない。米国の経済学者は「20分後にツイッターを投稿し、このすべてを完全に否定するかも知れない」と率直に語った。


 EUはトランプ氏による関税撤廃の提案が、実際にはEUの罠を掘ったことに注意すべきだ。EUがこれを拒否すれば保護主義者になり、関税の棍棒を振るうトランプ氏が自由貿易者になる。EUが関税撤廃に同意しその約束を果たせなければ、トランプ氏は違約を理由にEUにより多くを求めることができる。


 それではEUはどの程度譲歩し、法外な値段をふっかけてくるトランプ氏を満足させればいいのだろうか。ものすごい剣幕で家に押し入り金を要求する強盗への最良の対策は、「怖くない」と伝えることだ。米国の貿易上のいじめに対する唯一の方法は、勇敢に向き合い断固反撃することだ。一方的に譲歩しても尊重・理解されることはない。むしろトランプ氏の「米国ファースト」を促し、「宥和主義者」がより大きな犠牲を強いられることになる。



「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月27日



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