一方、投資管理の面において、2013年から自由貿易試験区で試験運用され、2016年から全国で運用されてきた外商投資企業に対する参入前国民待遇及びネガティブリスト管理制度の確立が「外商投資法」の条文に盛り込まれた。これによりこの二つの制度に法的根拠が与えられたことは、特に注目すべき点であると思われる。また、外商投資情報報告制度を確立させ、外商投資企業が商務所管部門に投資状況を提出することで他の関係部門との間での情報共有が図られ、他の機関から同じ投資状況の提出要求がなされないことなど、各種行政手続きの簡素化が示されたことも、外国企業による中国への投資・参入を促す効果をもたらすものと思われる。
この他の外商投資や対外開放の促進を図る政策として、政府調達活動や資金調達等の面で、外資企業と内資企業との間で公平性が保たれ、公正な条件の下で自由競争が図られるようになったこと、外商投資企業による資金調達の規制緩和の方針が示されたことも、中国のビジネス環境改善が大きく前進した証拠として歓迎すべき点である。
今次全人代で「外商投資法」が制定されたことで、基本的な中国の対外開放と外資誘致への積極的な姿勢が明確に示されたことは間違いない。今後は、外商投資企業に対する政策・措置などが、実際にどのように具体的に運用されていくのか不明確な部分も少なくない。既に中国に進出している日本企業としては、先ず具体的な運用を定めた実施細則等の関連法規の整備を速やかに行ってもらいたいところであろう。また、本法の実施に当たり、実効性、透明性、全国的な統一性(公平性)が図られることも期待されるところだ。
「外商投資法」の制定によって、これまで外商投資企業の設立・運営等の基本法であった「外資三法(中外合弁経営企業法、中外合作経営企業法、外資企業法)」が廃止されることになる。本法では、旧法に基づいて設立された外商投資企業は、既存形態を維持できる期間を5年間としており、この猶予期間にどのような手続きが必要なになるのか、本法が施行される2020年1月1日までには、関係当局による法的指導が求められる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年3月28日