米国政府がビザ(査証)審査強化に乗り出している。先月31日からビザの申請様式を改訂し、一部の外交官・公用以外のビザ申請者に対し、過去5年間に利用した20のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サ―ビス)のアカウント情報を記載するよう義務付けた。中国の大手SNSも申告の対象となり、今回の措置に世論の批判が高まっている。
米国は安全保障上の観点から審査を強化したと強調しているが、世論の反発を招いており、大きな波紋が広がりそうだ。米国務省は、今回の措置により、推計で約71万人の移民ビザ申請者と1400万人の非移民ビザ申請者に影響が出るとしている。
注意すべきは、ビザ申請者にSNSのアカウント情報の提供を求めたのは米国が初めてだという点だ。今回の措置は、米国がビザの発給を拒否できる新たな理由になるため、申請者に一段の心理的圧力がかかるのは疑いない。SNS上での自分の発言内容が審査官の不興を買い、ビザが発給されなくなるのではないかと気にするようになれば、SNSの利用に影響を及ぼしかねない。そうなっては、米国が謳う言論の自由を脅かすことになりはしないだろうか。
米国は世界一の先進国であり、経済的にも文化的にも世界の中心であるため、多くの人の利益に関わってくるわけで、米国にはこれを重んじる義務がある。米国は多大な影響力を持つがゆえに責任も大きい。ビザ申請者に不便を与え、その権利を侵すようなことがあれば、直接の不利益をもたらすばかりか、好ましくない見本ともなりかねず、世界の調和に影響を及ぼしかねない。