米国追加関税措置と世界経済への影響

米国追加関税措置と世界経済への影響。

タグ:米国 追加関税 世界経済

発信時間:2019-06-14 11:04:23 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

日中経済協会

調査部長 髙見澤学

 

  2018年12月1日の米中首脳会談で、一旦は沈静化をみせた米中貿易摩擦だが、2019年5月5日の米国トランプ大統領による突然の中国からの輸出製品分に対する関税上乗せ措置の発表は、米中経済対立を再燃させるきっかけとなった。米国は、中国からの輸入製品2,000億ドル分に対し、それまでの10%から25%への関税引き上げを5月10日に発動し、その対抗措置として中国は6月1日から米国からの600億ドル相当の輸入製品に対して追加関税率を最大で25%の引き上げを行った。更に米国は、米国が輸入するほぼすべての中国製品に追加関税を課す第4弾の制裁措置についても発動の可能性を示唆するなど、米中対立は、泥沼化の様相を呈している。

 

  現在、世界第1位、第2位の経済大国である米中両国は、経済規模という点で、両国合わせて国内総生産(GDP)〔2018年、IMF統計〕では世界全体の40%を占め、貿易額〔2017年、WTO資料〕では世界全体の23.2%を占めており、いずれも第3位以下を大きく引き離して、圧倒的な存在感を示している。この2大経済大国が対立を深めれば、その世界経済に及ぼす影響が計り知れないほど大きくなることは想像に難くない。

 

  米中経済対立が激化する背景には、ますますグローバル化する経済と情報通信技術がもたらす第四次産業革命の到来によって、世界的に大きな社会変化が生じている現実がある。指先一つで世界が瞬時につながり、人々の社会生活と生産現場に大きな変革が生じている。そうした社会基盤を支えるハイテク製品の開発や運用は更に高度化、複雑化し、グローバル市場での競争は激しさを増している。近年、中国は発展の後発優位性を活かし、凄まじい勢いでデジタル技術の開発を進め、その実用化によるデジタル経済が急速に進展し、電子商取引や配車サービス、スマホ決済など海外市場へもこうしたビジネスが普及し始めている。

 

 中国のこうした動きが世界経済に及ぼす影響は想像を超え、米国にとって「トゥキディディスの罠」と称される覇権国(米国)と新興国(中国)との争いを想起させるほどの脅威を感じさせているとの分析もある。中国の経済発展や独自の技術開発によるグローバル経済への影響が、逆に世界経済における米国の地位低下につながることを恐れているともいえるのかもしれない。

 

  6月9日付けのロイター通信によると、先般日本の福岡で開催されたG20財務相・中央銀行総裁会合で、ドイツ連銀のワイトマン総裁は、米中貿易摩擦によって世界貿易が中期的に1%押し下げられるとの見方を示したという。短期的には世界経済は小幅な落ち込みをみせるものの、大幅に落ち込むとは考えられない。しかし、中長期的には不確実性が高まることは必至で、各国政府は経済運営に苦しむことになるだろう。

 

  米中貿易摩擦問題解決の第一歩は、WTO改革を含め新たな透明性、公平性、一貫性、統一性を確保した国際的な貿易・投資ルールを定め、米中両国を含む世界各国がそのルールに従うよう努めることだ。



「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年6月14日





TwitterFacebookを加えれば、チャイナネットと交流することができます。
中国網アプリをダウンロード

日本人フルタイムスタッフ募集    中国人編集者募集
「中国網日本語版(チャイナネット)」の記事の無断転用を禁じます。問い合わせはzy@china.org.cnまで