ホワイトハウスは一方的な貿易戦争の発動について説明する際に、いわゆる「外国企業撤退論」を持ち出す。米国側は、関税の圧力により「無数の外国企業が中国から撤退中だ。高額の関税による輸入価格を受け入れられないためだ」と称している。そのため「貿易戦争は中国経済の成長率を落とし、中国の失業率を高めている。あと一押しで、中国人はおとなしく交渉し署名せざるを得なくなる」というのだ。
ところが事実は本当にホワイトハウスの発表の通りなのだろうか。日本経済研究所が、中国で事業展開する大手日本企業504社を対象に行なった調査によると、事業もしくはサプライチェーンの中国撤退を検討しているとした企業は1割のみだった。米中貿易全国委員会が発表した調査によると、年内に中国から事業を移転していない、もしくは移転する計画はないとした米国企業は87%で、中国事業で利益を創出できるは97%にのぼった。また中国の公式統計データによると、プロジェクト建設を目的とする外国直接投資は過去12カ月で1400億ドル以上にのぼり(為替及び貿易収支を除く)、毎月120億ドル以上の計算となっている。これは米国が追加関税を導入する前の12カ月とほぼ変わらず、かつ過去5年に渡りこの成長ペースを維持している。言い換えるならば、「外国企業撤退論」には統計データの裏付けがなく、ホワイトハウスは自国の貿易戦争の成績を過大評価していることになる。
なぜこのようなことになっているのだろうか。これは中国が依然として世界トップの経済成長率、高い投資収益率を維持しているからで、また新経済の急成長も中国経済により多くの活力とチャンスを与えている。昨年の中国経済に占めるデジタル経済は31兆3000億元(12.3%)だった。伝統的な第一・二・三次産業がGDPの3分の2以上を占めていることを考えると、この伸び率に対応する伝統的な部分の伸び率は約3%になるはずだ。さらに低い農業の伸び率を除くと、工業付加価値額の合理的な予想値は3−5%の範囲内となる。つまりホワイトハウスが米メディアの伝統的な統計データのみを利用すれば、中国経済を実際よりも悪く見せ、貿易戦争のより多くの口実を設けることができるということだ。