日本の牧原秀樹経産副大臣は先月29日、ブルームバーグのインタビューに応じた際に、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉について、インド抜きでの妥結は「全く考えていない」と述べた。梶山弘志経産大臣が東アジアサミットの会期中に開かれた記者会見で、「日本はインドを含む妥結を目指し、RCEPの中でリーダーシップを発揮したい」と述べていたが、「インド抜きの妥結はない」という最新の発言はやや予想外であった。
牧原氏は日本のRCEP交渉における首席代表で、日本政府の態度をある程度反映した。
まず、この発言には友好的な姿勢を示す狙いがある。日本の安倍晋三首相は今月15−17日にインドを訪問する。安倍氏とモディ首相の会談に楽観的な結果があれば、今年の日本の外交にとって建設的な成果となり、東南アジア諸国の中で威厳を強めることができる。また実質的な進展がなくても、日本政府は少なくとも努力したことになる。
次に、インドは日本の「インド太平洋構想」の中で重要な地位を占めている。自国の利益のためにも、米国に迎合する必要性からも、日本はインド抱き込みに取り組む必要がある。ASEANの一部の加盟国が提案した15カ国による妥結に反対したのも、日米両国が経済・外交戦略として掲げた「インド太平洋戦略(構想)」におけるインドの重要な地位に配慮してのことだ。
それから日本は現実的にも、インドで大規模な投資を行う自国企業を支援するため、多国間枠組みによりインドの改革を推進する必要がある。インドの人口は十数億人で、経済が高度成長の軌道に乗っている。高い潜在力を秘めた消費市場、これは日本の商業的な利益になる。日本政府内から「インド抜きのRCEPならば妥結の必要はない」という声が上がるのも理解しやすい。
他にも日本には、RCEPにおける中国の影響力を相殺するため、インドを抱き込む必要があったと分析されている。
上述したさまざまな思惑があっても、日本の副部長クラスの高官による最新の発言は唐突で、さらには無責任な印象を与える。
中国はRCEPに積極的な態度を持つが、RCEPはASEANを中心とする地域経済一体化協力であり、参加国間で互いに市場を開放し地域経済一体化を実施するための組織形態だ。経済グローバル化がつまずくなか、この地域一体化の取り組みは地域各国の共通の利益に合致する。日本はこれをよく理解しているはずだ。公式発表及び指導者のスピーチの中でも、日本はASEANの中心的な地位を支持すると何度も繰り返しており、ASEANが提案・主導するRCEPの早期妥結を促進すると表明している。
第3回RCEP首脳会合が11月4日、タイのバンコクで開かれた。インドは国内の政治的な理由から署名の見送りを宣言した。当時日本を含むRCEPの15の参加国は、全20章及びほぼすべての市場参入制度の条文ベースの交渉を終え、今後さらに法律審査と同協定の2020年の正式な妥結に進むと表明した。各国は共に努力し、インドを説得することで、各国が満足できる手段による問題解消を目指すと表明した。
各国は現在、条文の確認と関連手続きの段階にある。インドが早期加入できれば最も理想的ではあるが、この可能性は現在見る限り高くない。7年の交渉期間を経て、各国が多くの取り組みにより間もなく条文確定となっているが、これはその他の15カ国にとって得難い進展であり、インド一国の態度により歩みを止めるべきではない。これまでの計画に基づき、まず15カ国で妥結してからインドと協議するのも柔軟かつ実務的な選択だ。日本はRCEPの重要な推進力の一つであり、地域全体の利益と国の長期的な利益を考慮し、小さな計算ではなく大きな計算をするべきだ。これこそが真の責任ある態度だ。(筆者・白如純 中国社会科学院日本研究所研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2019年12月2日