中国はこのほど5G、AI、インダストリアル・インターネット、IoTを始めとする新型インフラの発展を掲げ、社会各界の注目の焦点になった。国内の感染対策の成果が定着し、操業再開が全面的に展開されるなか、「新型インフラ」と社会各分野の融合発展のペースが上がっている。情報産業のハードパワーへの投入を拡大すると同時に、情報産業のソフトパワーの強化にも注意が必要だ。
中国の情報産業は近年、長期的な発展を実現した。一連の市場競争力を持つ完成機メーカーを生み、一連の小規模だが高い将来性を持つ基礎ハードメーカーを育んだ。しかしコンピュータソフトウェア環境や学科応用などの重要分野は依然として、世界トップ水準に達していない。
ソフトは情報技術の魂だ。ソフトと応用が不足していれば、どれほど巨大なハード計算資源があっても生産力に効果的に転化することはできない。中国のソフト産業の特徴は現在、「基礎が弱く応用が強い」となっている。国内企業は商業的に大成功を収めた多くの応用ソフトを開発したが、国内企業の基礎ソフト分野はほぼ荒れ地の状態だ。海外のソフトを使用するか、海外のオープンソースを利用している。
中国は世界最大の製造業大国だが、産業用ソフトはほぼSAP、シーメンス、ダッソーなどの海外企業によって独占されている。EDA(電子設計自動化ツール)は完全に海外3大手に独占されている。これらの海外製ソフトは高額で並行スケールが限定的だ。一部のモジュールは海外から輸出禁止されている。一部の軍需産業用のソフトも中国への販売が禁止されている。中国製スパコンの応用、科学技術産業の発展に影響が生じている。
中国ソフト産業の就業者の多くが現在、アウトソーシングサービスに従事している。分かりやすく言えば、これは海外のプログラマーに単純な重複作業とされている仕事だ。海外のソフトメーカーは全体的な技術枠組みを構築しているが、中国のプログラマーはその枠組内で「書き直し」を繰り返すか、「穴埋め問題」を解いている。
国内の一部の大学は就職を見据え、アウトソーシングサービスに長けたプログラマーの育成に重点を置いている。経験豊富なベテランプログラマーは卓越した技術を持っていても、関連するトップレベルデザインがなければ、単独もしくは小さなグループの力で標準を制定することはできない。基本的に海外の技術システムに追随し、海外で新しい技術や標準ができれば、それに食いつき学習することになる。
人材流出問題も無視できない。中国の基礎ソフトメーカーは海外大手と比べ技術的に劣っており、商業的に見ても海外大手の隙間を見つけて生存を図る状況で、十分な賃金を支払えない。同時に国内の金融やITなどの業界が、高い賃金により多くの人材を集めるため、人材不足のソフト業界からさらに「血」が失われている。
海外のプログラマーは通常、その職業人生において一つの技術にしか取り組まない。国内のプログラマーは企業がプロジェクト中心型であるため、各方面の技術を習得しなければならない。広く浅く技術を身に着けており、また一生プログラムを書き続けるのではなく、管理者になる必要があるという共通認識を持っている。管理者になると開発の現場から退く。この現状により国内のソフト産業の現場は、優れた技術を持つプログラマーを留めることができず、技術者の不足がさらに深刻化している。
中国のソフト産業のハードパワーを強化するためには、ソフトパワーの支援力を発揮しなければならない。まず、産業用ソフト及び並行計算用のソフトについては、産業界の投資により基金運用組織を立ち上げるべきだ。資本の価値の維持・拡大を実現する一方で、出資により企業のソフト・アプリ開発もしくは移植をサポートできる。政策について、政府は積極的にソフトを移植するかアプリを開発する企業を対象に、税制優遇措置を講じるべきだ。
国有企業は率先して国産の産業用ソフト、設計ソフトを調達し、実際の生産環境においてこれらのソフトを使用することでポジティブフィードバックを形成する。国内の産業用ソフト、設計ソフトの不足を見つけ、改良を行うよう促し、らせん型の向上を実現する。
人材問題を解消するため、教育界と産業界は両面から推し進めなければならない。大学は産業界と共同で関連カリキュラムを組み、高水準の技術者を育成する。企業はより豊富で多元的な手段により優秀人材を国内に留める。コンピュータソフトウェア環境及び学科応用などのボトルネックの解消に取り組み、整った中国並行計算産業環境を構築する。(筆者・鉄流 技術経済観察者)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年4月11日