国連はこのほど、グテレス事務総長の名義で「新型コロナウイルス感染症の世界観光業への影響」についての政策概要を発表した。概要は感染症流行のダメージを受けた観光業がもたらした経済・社会への影響をまとめたもの。概要は、観光業には持続可能発展目標を促進する作用があること、また観光業と環境・文化間に繋がりを強調した。国連は各当局に、観光業に頼る女性、青年、非正規労働者への感染症による影響を軽減するよう促した。
概要は以下のように示した。感染症は各方面に観光業と経済社会部門、自然資源と生態系間の相互作用を見直す機会を与えた。また、観光業の評価と管理をより確実に行い、利益の公平な配分に努め、カーボンニュートラル、柔軟な観光政策への移行などを推し進めた。各国政府は観光業のモデル転換の支援、観光業再開を含む人間中心の観光業を再構築し、民衆、旅行者、コミュニティの健康と安全を優先事項にする必要がある。
観光業は各国の主な経済分野の一つで、一部の国ではGDPの20%以上を占める。感染症が世界の観光業にもたらした影響はきわめて深刻で、ダメージが最も深刻な業界の一つである。関連のバリューチェーンも影響を受けている。
2020年の世界の観光収入は9100億ドル減少し、1兆2000ドルまで縮小した。世界のGDPは1.5~2.8%低下する見通し。観光業関連の宿泊業・食品サービス業などの労働集約型産業に大きな損失を与え、観光業で約1億人分の雇用が消失する恐れがある。観光業従事者の54%を占める女性、青年、派遣社員が最大のリスクに直面している。小島発展途上国、後発開発途上国、アフリカ諸国などの観光業に最も依存する国は、雇用と経済成長に最大の影響が出ている。
概要は、感染症は自然・文化遺産の保護活動に深刻な影響を与えたとしている。伝統的な祭りや集会などの無形文化遺産活動の多くが中止、延期された。手工芸品市場の閉鎖に伴い、先住民族の女性の収入は特に影響を受けている。90%の国が世界遺産を閉鎖し、博物館の90%が休館し、うち13%は今後再開放されない可能性もある。そのほか、観光収入の減少により生物多様性の保護資金源が途絶え、生態保護活動は危機に直面している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年8月27日