米連邦準備制度理事会(FRB)はこのほど、75ベーシスポイントの追加利上げを決定した。その他の通貨に対するドル高を促し、国際金融市場の変動を引き起こした。
世界の観測筋は、米国の金融政策を受けたドル高進行は、世界に壊滅的な影響を及ぼしていると見ている。米国は金融政策と為替レートを重要ツールとし、ドルの覇権を利用し世界の物価上昇率と債務水準を持続的に押し上げ、各国の金融政策の余地を狭め、かつ世界の金融引き締めの流れを作り世界経済を後退に向かわせている。
ドル高による為替レートの「はさみ状価格差」が、インフレにより世界を刈り取っていると分析する声もある。発展途上国であってもその他の先進国であっても、自国通貨の対米ドルレートが下落すると、ドル建てで輸入される大口商品の価格が上がり、自国の物価上昇がエスカレートする。米国の場合は他国からの輸入品が安くなるため、ドル高は国内の物価上昇率を抑える手段の一つになっている。
ユーロ圏を例とすると、8月の物価上昇率は年率換算で9.1%にのぼっており、欧州中央銀行の2%という中期物価目標を遥かに上回っている。ユーロ圏19カ国のうち9カ国の物価上昇率が年率換算で2桁台にのぼっている。ドルに対するユーロ安後、欧州は米国からドル建ての原料と半製品を高い金額で購入し、米国から物価上昇の圧力を転嫁されている。
インフレ進行と自国通貨安などの圧力を受け、多くの国がFRBに追随し利上げせざるを得なくなっている。バンク・オブ・アメリカのチーフエコノミストであるイーサン・ハリス氏の言葉を借りるならば、世界は「利上げ競争」に陥っている。
FRBの今回の利上げの前後に、スウェーデン、スイス、英国、南アフリカの中央銀行が大幅な利上げに踏み切った。うちスイス中央銀行の利上げは、欧州の10年に渡るマイナス金利時代の終了を意味する。日本はマイナス金利政策を維持している唯一の主要経済国となった。
世界銀行は9月中旬に発表した研究報告書の中で、世界の中央銀行は過去50年に見られなかった同程度の利上げを行っているが、この流れは来年まで続き世界経済を衰退させ、かつ新興国と発展途上国に金融危機をもたらし長期的な害をなしうると判断した。
債務危機は、ドルの覇権が世界に危害をもたらすことのもう一つの重要な現れだ。FRBの金融政策の急転直下により世界の流動性が大幅に低下し、貸付の選好が攻めから守りに転じ、資本の米国への回流が始まっている。すでに多くの負債を抱えている新興国は債務から抜け出せなくなっている。
イエレン米国財務長官は先ほど、ドル高は新興国、特に大量のドル建て債務を抱える経済国に危機をもたらすと認めた。
世界銀行のチーフエコノミストであるインダーミット・ギル氏は英紙「フィナンシャル・タイムズ」の取材で、「新興国の債務危機が特に際立っている。世界金融危機の前と比べると、一部の低所得国がより脆弱になっており、世界的な引き締めを背景とし債務の苦境に陥る可能性がある」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年9月27日