中国と米国の地政学的な駆け引き、及び製造メーカーと消費者に影響を及ぼし続けているサプライチェーンの問題を鑑み、世界の製造業が中国から撤退するという説が取り沙汰されている。ところが米中貿易は昨年記録を更新し、かつその勢いが弱まる兆しはない。米紙が伝えた。
トランプ政権は2018年に、中国製品に数十億ドルの追加関税を課した。圧力を受けグローバル企業が生産ラインをベトナム、バングラデシュ、インドなどのアジアのより低コストな地域に移転した。感染症により世界のサプライチェーンが混乱すると、「ニアショアアウトソーシング」が叫ばれるようになった。これは例えばメキシコで工場を建設する、もしくは自国に回帰させることで製造業を国内市場に近い場所に移すことだ。
ところがこれらの経済的・政治的な強い圧力を受けながらも、多くの企業が中国から生産を移転していない。なぜか。中国がすでに製造業の「極意」を握っていることが事実によって証明されている。世界の競争力の研究を掘り下げると、一部の製造メーカーの隠されたデータを見つめ直すことになる。これらのデータは、バングラデシュなどは人件費が安くても、現地の生産力も非常に低いことを示す。アジアのその他の新興経済体と比べると中国は人件費が高いが、その生産力も高い。中国からの生産移転を決定する際に、この2点を考慮しなければならない。しかもこれは問題の一部に過ぎない。
世界の製造業の運行について、グローバル調達企業の重役を取材した。同氏は「野球帽の生産を例とすると、これは携帯電話の生産とは異なるが、それでも非常に複雑だ。中国の製造業は高水準の集約型経済もしくは集約型エコシステムを利用できる。さらにパーカーの生産を例とすると、これはその裁断と縫い合わせに必要な生地のほか、装飾品、染料、ファスナー、紐、その他の必要な生産材料と関わる」と述べた。
紡績品生産全体のエコシステムが中国国内にある。米国もしくはカナダの小売業者が販売する紡績品の生産を中国から移転しようとするならば、それと関連するエコシステム全体も移転せざるを得ない。そうでなければ、中国から生産材料を調達し、これをバングラデシュなどの最終生産地に運ぶ必要が出てくる。
中国撤退のコストが高くつきすぎることが事実によって証明されている。完成品のエコシステムが中国にあれば、中国は世界の製造業の中で重要なシェアを占め続けることになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年7月10日