健全な都市化のノウハウ、日本から中国へ

健全な都市化のノウハウ、日本から中国へ。

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発信時間: 2010-10-28 16:42:04 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

 

 

陳言=文

「中国では7億人に上る農民が都市住民になっていくだろう。これは、ASEAN、インド、ラテンアメリカなどと合わせると、30数億の農民が都市住民になっていく中の一部分にすぎない」と上海万博テーマフォーラムで経済学者の樊綱氏は発言したが、中国内外から参加したパネラーの誰もが、しばらくはコメントの言葉もなく、この「七億人」という数字の大きさをかみしめているようだった。

上海の人口はすでに2千万人を上回っている。未来都市について、ドイツから何が学べるかという記者の質問に対して、フォーラムに出席したドイツの元副首相は、「私の住む都市には340万の人口しかない。それより人口の多い都市の未来については、私のほうが学びたい気持ちでいっぱいだ。とてもアドバイスなどできる立場にない」と肩をすくめ、両手を広げて「ノーコメント」の動作をして見せるのが精一杯だった。

交通などのニーズに伴うエネルギーの大量使用、上下水設備やごみ処理施設の差し迫った必要、災害に対する備えなど、都市化に伴って発生する問題は少なくない。日本にも2千万の人口が一つの自治体に集中してしまうケースはないが、それでも都市化に伴って必要になるノウハウ、とくにアジアの国々にとって役立つノウハウを日本はたくさん持っている。両国の政治経済関係が良好で、国民間の相互理解が進むなら、そのノウハウは中国でもスムーズに応用できるはずである。

 

今年の5月12日、「5・12防災の日」に上海市では25万戸の家庭に無料で防災セットが配られるなど防災知識の普及が進められた(東方IC)

 

共青城でスマートコミュニティの実験

今年、日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)北京事務所の後藤雄三所長は江西省九江市にある共青城開発区に何度も足を運んだ。そこでスマートコミュニティの実験をするためだ。

中国では産業における省エネが重要かつ緊急の課題になっており、省エネ設備の需要が高いが、一方で、都市化が進み、ビル、商業施設の省エネや交通システムの近代化などのための新しい需要も高まってきている。さらに水関連の環境分野でも先端技術に対するニーズが大きい。

「都市建設に合わせて、スマートグリッド化を進め、電力を高効率に制御していく新しいシステム、しかも発電だけでなく、送電、電力消費まで含むスマートコミュニティづくりの技術を開発したい。実現の可能性を探るため、共青城市で実験を行っています。それで、今年に入ってから何回も調査に行ってきたのです」と後藤所長は明かす。

これまでは、日本の先進的な技術を中国に移転し、モデル・プロジェクトを立ち上げてから、その後で中国国内で関連技術を普及していく方式を取ってきた。省エネ技術、太陽光発電技術などのクリーンエネルギー技術がそうだった。「そうした技術協力は、私が知るだけでも六十件は下らないでしょう」と後藤所長は言う。

しかし、ここ数年、プロジェクト推進のやり方に変化が見られる。中国のニーズに合わせて、そのための技術開発をしながら、関連の先端技術を日本から移転するようになってきているのである。新技術を取り入れ、スマートコミュニティづくりを進め、投資環境を整えてから、中国国内、あるいは日本などの外国からの投資を誘致するという形である。

スマートグリッド、またスマートコミュニティについては、他の国ではたいてい企業が中心になって構想し、その実現を推し進めている。中国の大都市では果たしてひとつの企業でそうした構想・実現が可能かどうか、私には確信がない。NEDOは従来の単なる技術移転、技術普及の方式を改め、新しいモデル・プロジェクトに変更して、中国の地方政府と協力する形を模索しているようだ。新技術の実際の効果を見てから、それを全中国に普及させていく方法である。北京郊外の延慶県では、県政府との間で、太陽エネルギー発電関連の技術提携がこの方法で推し進められているという。

都市化が急速に進む中国では、日本の都市関連の省エネ技術、環境技術はこのような新しい方法で普及していく可能性が高い。

都市防災に日本のアイデアを

新しい都市が次々と誕生し、既存の都市が巨大化していくなかで、日本の都市防災システムは、中国にとって非常に参考になるはずだ。

ジェイコム(JCOM)国際会展(北京)有限公司の取締役会長である難波哲明氏は、展覧会やイベントのプロだが、2011年西安世界園芸博覧会の特別顧問として中国各地や世界各国を飛び回っている。中国各地を回るなかで、行く先々で都市化が急速に進んでいることを肌で感じるという。

「中国のどこの都市でも高層ビルがどんどん増えているが、最近はビルとビルの間に緑地を設けたり公園をつくるケースも多い。私はそれを見て、緑地や公園に近隣の住民のために数週間分の水や非常食を蓄えておく施設を付設すべきだと地元の地方政府の役人にアドバイスするのが常です」と難波氏は言う。

陳言

コラムニスト、『中国新聞週刊』主筆。1960年に生まれ、1982年に南京大学卒。中日経済関係についての記事、著書が多数。

中国では昨年の四川大地震、今年の甘粛省での地震、沿海部での台風被害など、自然災害が頻発している。ひとたび災害が発生すると、ただちに救援活動が行われるが、災害後の都市建設でどう災害に備えるかについて配慮がなされるべきなのは当然として、むしろ災害の経験のない都市でも、その都市建設には防災対策を組み入れるべきだと難波氏は強調する。西安ではマンション建設の現場を見て、市政府の担当者や建設にあたる設計者・施工者に防災対策の必要性を繰り返し提言してきたという。

「上海では都市をテーマに万博が開かれているが、日本の都市では危機管理がどのように行われているのか、それも来場者に知らせるような配慮もほしい」と難波氏は願う。

都市化のテンポは加速度的に速くなっていく。7億人の農民が都市住民になることによって、中国には人口百万人規模の都市がいくつ誕生するかといった設問ではなく、人口1千万を超える都市が、2020年までにいくつ出るかるかで考えたほうが現実味があるかもしれない。具体的に言えば、人口94万人の広東省汕頭市、99万人の山西省大同市の現実よりも、現在中国には44の都市が人口1千万人を超えているという現実を重視すべきである。

シルクロードの要衝として栄えた楼蘭は、砂漠の中にその痕跡を残すだけである。中原から楼蘭へ、さらに西域の奥深くまで数千キロ以上も連なるシルクロードに沿って栄えた古代都市はなぜ消えてしまったのだろう。百年、千年の歴史に耐えられる都市を建設するためには、その省エネ、環境、防災などの都市要素を一つ一つ丹念に考慮しなければならない。日本の関連技術、防災体制などから中国が学ぶ必要は少しも減少していないことを強調しておきたい。

 

人民中国インターネット版 2010年10月

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