今回の事件で具体的に考えますと、国家政策レベルの(1)に該当する場合ではなく、上記の(2)に該当していた場合の「当局の意思は何だったのか?」ということです(もし、単に今回当局がたまたま初めて発見した詐欺行為そしてその摘発であったら、チャイナリスクではありません。)。中国政府当局が国家間の対立のために「スケープゴート的懲罰」を与えた可能性があるわけです。
ですから、もし今回のカルフールのケースで、カルフールフランス本社の意思決定ではなく、中国内現場の低層の独断行動であって、中国スーパー業界内でも一般的に横行しているレベルの詐欺(詐欺というよりもプロモーション・マーケティング行為)であって、中国政府当局はこれまでもそういった状況を熟知していた、にもかかわらず、今回の「拳がふられた」状況であった場合は、カルフールは最大限の「チャイナリスク」を体験したといえるでしょう。
これだけ中国内でうまくやってきたカルフールがそう単純にミスを犯すとも考えにくいですから、単にカルフールの「ケアレスミスでない」ことを前提とするならば、今回の政府当局の「意思の変化」は何だったのでしょうか。真意は把握することができませんが、中国国内資本スーパー保護のためであったのか(経済産業的意図)、国際的な政治対立の意味合いがあったのか(外交政治的意図)・・・、告発の主体が発展改革委員会であることも踏まえ、胡錦濤国家主席が訪米から帰国し、世界とのつながりをさらに意識した中国経済について・・・なかなか憶測はつきないものであります。
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年1月31日