それでもやはり、食品(産業)の安全性については、イメージだけでなく、実質的に日本が競争優位であるように思われます。
もちろんこれまでも、野菜や魚介類のような加工していない食品であれば、日本の製品と中国の製品であっても、それなりに価格差によって、日本市場の消費者は中国製品を選択することも大いにあったわけです。しかし、小売での「食料品ブランド」という分野では、「安全性」という御旗のもとに、日本市場では圧倒的に中国ブランドは受け入れらにくいという現状があります。また、逆に中国市場では、「安全性が高い」というイメージから日本ブランドが強く、日本米が中国で高付加価値に高価で販売されているという実績もよく耳にしますね。
日本市場での中国食品の低安全性(危険性)というイメージを定着化させてしまったのは、いくつかの事件によるところも大きかったと思います。特に、数年前の「毒ギョーザ事件」では象徴的でありまして、日本の世論は当時一気に「中国食品バッシング」に傾いたのでありました。そして「安全な日本の食品を買おう」というブームが起こりました。
一方で、そうした事件が月日と共に風化すると、日本ではそのバッシングは無かったかのように、やはり「安価」な中国生産の食品(加工食品も含めて)をなんということなく買うようになっていくということが繰り返されていると思います(これは貿易額等のデータでも明らかに証明されています。)。いずれにしても、その前提には、常に「中国製食品は危険(かもしれない)」そして「日本製食品は安全」という認識が日本の消費者に根強いものであるということが言えるでしょう。
すなわち、「加工されない食品」、「ノーブランドの加工食品」は別にすれば、少なくとも「小売食料品ブランド」では日本中国双方の市場において、顕著に日本のブランドが競争優位であるという現実が会ったと思います。
こうした事実を前提としますと、今回のワハハが日本に進出するというのは、非常に興味深いものであると思います。今回の提携内容の詳細は一切発表されていませんが、単純な製品加工などをワハハが受け持つ又はワハハの製品加工を日本企業が受け持つOEM提携などではなく、または当該日本企業の乳製品ブランドの中国進出でもなく、もし、日本市場での最終小売製品のブランドとして堂々とワハハブランドが入ってくるということになるのだとしたら、・・・・中国の食品安全性について心理的アレルギーのある日本人消費者とその総本山とも言える中国食品ブランドの「面白い化学反応」がみられるかもしれません。(フランス・ダノン社の傘下とは言え、ブランド名はワハハであるわけですから。)