そういったときは、海外のどこで生産するのか「地域選択(Location choice)」が国際化の第一歩になります。いまは、まだすぐには企業が動いているとは思えませんが、この流れはほぼ確実でしょう。企業は生産技術や生産コスト、政治的安定性などをいろいろ考慮して、「地域選択」をしていくことになります。
一方で、受け手側国(Host country)の動きが、ちょっと面白くなってきました。南米、中国やインド等多くの選択肢がありますが、僕がみるところ中国の受け手側が地震後すこしずつ受入口として手を挙げだしているようです(この話は、かなり多くのところで聞くようになったので、また改めて別途ご紹介します。)。
今後、「日本の雇用を守る」や「産業の空洞化を防ぐ」ということさえ主張していられないほど、日本のエネルギー枯渇問題が深刻化すれば、大企業は風評に臆することなく「日本発祥の産業を衰退させないため」という御旗を振って、対外直接投資をふやすことができるでしょうし、さらに、それについて中小企業も海外進出する道が開けてきます。
というわけで、今回の震災をひとつ別の角度からみると、企業に海外進出(海外生産ポートフォリオ)の大義名分をもたらしたことになると思います。震災によって、企業がうけた実害、そしてこれからうけるであろう生産性の低下というものは避けられませんが、これまで「産業の空洞化」「雇用の保護」という社会的責任から海外シフトをためらわざるを得なかった企業にとっては、良い大義名分(言い訳)ができたといえるかもしれません。
ついに、加工貿易のスタイルから、海外シフト・対外直接投資というメカニズムを使って、日本に新しい産業スタイルができるかもしれません。雨降って地固まる、ということを言っていられるほど楽観的ではありませんが、「復興」が元の水準以上に起き上がるチャンスと変わっていけば大変、意義のある日本の挑戦となると思います。
中国の利害と一致するところも出てくるはずです。これから、復興の時間です!ガツッと日本の復興進めていきましょう!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年3月28日