日本のトヨタ自動車の豊田章男社長は2月24日、リコール問題をめぐる米議会の公聴会に出席し、証言を行った。アナリストは、大規模なリコール問題でトヨタは米国で刑事責任を追求され、巨額の賠償を迫られる可能性もあると指摘する。わずか1カ月の間に、トヨタのリコール問題は、最初のアフターサービスの問題から刑事責任まで、ドミノ倒しのように次々と連鎖反応を起こしている。
かつて「神話」を築いたトヨタに、なぜこれほど深刻な問題が起きたのか。今回の危機を経て、トヨタは再び覇者としての地位を奪還することはできるか。これは中国の自動車産業にどのようなチャンスと教訓をもたらすのか。これらの問題の答えを求めるため、チャイナネットの記者は中国社会科学院日本研究所経済研究室主任の張季風教授を取材した。
「トヨタ・リコール問題」は偶然でも必然でもある
トヨタのリーン生産方式は、かつて理想的な生産方式として世界的に広まったが、ここ2年は、技術や品質問題でリコール問題が頻繁に伝えられている。豊田章男社長は米議会の公聴会で、この原因を会社の「急激な拡張」に帰している。これは確かに主な原因の1つであるが、張教授は、トヨタが製品品質を維持できなくなったことは、経済のグローバル化、金融危機、米国の政策ないし日本の終身雇用制の崩壊などと深く関わっていると見ている。
経済のグローバル化が進む中で最適な資源配分を実現するため、メーカー側は部品生産や完成車の組み立てを世界各国で行うようになった。技術レベルがまちまちであるため、市場は錯綜し、日本国内で生産していたときのように品質を維持するのが難しくなった。
金融危機で、大手企業の景気低迷を始めとし、西側の経済大国は深刻な打撃を受けている。いち早く危機からの脱却を図ろうと、トヨタは常軌を逸し利益を追求し、規模を拡大し続け、輸出を増やすなどし、成功を焦っていた。
一方で、米国政府は金融危機の中、「グリーン・ニューディール政策」を打ち出し、消費者のハイブリッド車や電気自動車の購入を奨励するための優遇策を講じた。トヨタの自動車は省エネ面で優位に立っており、その上、業界内でも長年にわたり覇者のイメージが強く、自動車販売台数は急速に増加し、供給が需要に追いつかない状態となった。膨大な需要に刺激され、トヨタは生産増加を重要視し、生産ペースを加速させてきた。これが品質問題に火をつける結果となった。
張教授はまた、日本の終身雇用制の崩壊も日本製造業の「神話」崩壊の1つの原因であると指摘する。経済グローバル化の影響を受け、日本企業の戦後の基本雇用制度である「終身雇用制」が次第に崩壊し、従業員の企業への忠誠度、仕事への積極性と熱意は以前ほど高くなくなった。このような状況下で、生産された製品を昔と同じ水準にするというのは、当然、困難なことである。
そのほか、以下のこともトヨタが横柄になり、管理を疎かにすることと関係している。2002~2007年、トヨタの業績は目覚しく、日本の経済回復をけん引する原動力であると思われていた。このように、栄光を手にしたメーカーは傲慢になり、技術開発、企業と品質管理にゆるみが生じるようになり、やがては大きな災いを引き起こすに至った。
要するに、今回のトヨタのリコール問題は1つの単純な出来事ではない。これは、一連の問題と絡み合い、長年のさまざまな要因によって生じた結果であり、偶然でもあり、必然でもある。