この新たなチャネルを理解するなかで、まず、外需のGDPに対する寄与度をGDP統計で明確に説明することができないことが分かる。金融危機後、中国、日本などアジアの輸出国で、研究者や政策決定者は経済が驚異的な速さで悪化した状況について、不可解さを強く感じている。この原因はGDP統計が誤解を招いているためである。現行のGDP統計によると、外需のGDPに対する寄与度は主に純輸出のGDPに占める割合で表される。だが、問題はこのように簡単ではない。一時的な外需の落ち込みはGDP統計で明確に説明できるが、長期的・持続的な外需の低迷は予測要素を通じて企業の投資活動に影響を与え、経済に対し乗法的な影響をもたらすことになる。この場合、GDP統計は統計的な意義しか持っていない。
また、貿易信用は金融危機が直接的に貿易に影響を与えた新たなチャネルであると言える。貿易信用、特に短期の貿易信用は他の資金調達チャネルと同様、金融危機のなかで直接的な影響を受けたが、この収縮が現在の情勢下で外需の低迷を深刻化させた要因と指摘できる。日本の状況を見ると、明らかに貿易信用の収縮が貿易状況悪化よりも先に現れているが、2007年第1四半期以前は、貿易信用の供与は増加傾向にあった。だが、2007年第2四半期以降、資産面の貿易信用の収縮が現れ、こうした傾向は2008年第4四半期も続き、より深刻化している。
このような表面上の難題のほかに、低迷が続く日本経済の背後には容易に解決できない原因があると見られる。日本経済の1980年代末・90年代初めから現在に至るまでの状況から、日本経済自体がより根深い問題を抱えていることがうかがえる。
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