企業の能力の面で言うと、当時の日本企業はすでに成熟しており、トヨタや東芝、パナソニックなどの世界トップレベルの企業やブランドが現れ、多くのコア技術を握っていた。欧米諸国との差はほとんどなく、家電や自動車業は欧米を超えるまでになっていた。また、日本の経営モデルも世界から認められていた。中国の現状を見ると、世界トップレベルの企業は極めて少なく、世界トップレベルのブランドもまだ出現しておらず、企業にはコア技術が不足している。
そのほか、日本も1980年代中後期に不動産ブームを迎え、中国の現在の不動産業の発展状況はそれによく似ているが、異なる点もある。当時、日本では全国民が株売買や不動産売買を行い、専業主婦までもが取引を行っていた。多くの企業、銀行も不動産売買を行い、不動産ブームを助長させた。しかし中国では、多くの企業、特に銀行はまだ株売買や不動産売買に参入していない。
筆者は、中国の現在と日本の当時の状況は大きく異なり、日本の80年代末のような結果にはならないと見ている。また、バブル経済と長期的な不況をイコールで結んではならず、バブル崩壊は日本の長期的な不況の火種となったに過ぎず、その本当の原因は自身の構造的な矛盾にあるとしている。日本経済の長期的な不況に対して、多くの人が「失われた10年」と形容しているが、筆者はこれは「調整の10年」や「得た10年」でもあると考える。日本経済を高速列車に例えると、問題が起き調整を行ったが、まだ低速運行を続けているという状態だ。日本の経済総量はまだ減少しておらず、米国に次ぐ2位につけ、大きな変化もなく、国民の生活も深刻な影響を受けていない。
特にこの10年、日本はモデルチェンジを実現し、大量の技術を備蓄した。研究開発への投下は世界最大で、その絶対量も米国に次ぐ2位につけている。また、経済が低迷している時期に大量の技術を備蓄し、その意味は非常に大きい。今後の国際競争は生産能力の競争ではなく、革新能力の競争となる。日本にはこれほど高い技術能力と技術備蓄があるので、今後の競争で優位に立つのも容易である。日本の「長期低迷」から「得た10年」への経験こそ、中国が参考にする価値があると言える。(中国社会科学院日本研究所の張季風研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年3月26日