最近、日本政府が提唱する「第六次産業」という新しい農業形態のコンセプトが散見されるようになっている。日本では農業を第一次産業、工業を第二次産業、サービス業を第三次産業としているが、「第六次産業」とは、農業に商業的サービスを取り込ませた経営形態を指すものである。政策の奨励の下、何社かの大手企業が農作物の生産を始めている。発光ダイオード (LED) 照明器具、太陽光発電などの技術を応用し、「植物工場」を作り、農業の「工業化」の手段を模索し、新産業を創出するのを狙いとしている。
日本における農業技術の進歩は昔からめざましく、農業の機械化も早い時期から行われている。1960年にはすでに耕うん機が導入され、1980年頃には田植え機、トラクタ、コンバインがすべて農業に用いられるようになった。現在、日本における農業の機械化はすでに自動化に向かって動いており、無人田植え機はすでに開発を終えている。だが、農業人口が急減し、農地の荒地化が進み、日本の食料自給率が落ち続ける、などといった潜在的な危機となる要因が、将来、日本経済の大きな脅威となるだろう。このような背景の下、日本政府は、農業技術による農業の活性化をはかり、農業の「工業化」を推し進めて行く方針を打ち出している。
三菱化学株式会社は、今年4月、海上輸送用の大型コンテナを改造した「植物工場」を商品化している。 この「植物工場」はコンテナの上部に太陽電池とリチウムイオン電池のシステムを装備している。コンテナ内には水処理装置が組み込まれ、水の循環再利用により節水できるようになっている。LED 照明器具は農作物の光合成を促し、土を使わない水耕栽培システムが最適な液体肥料の供給を行っている。コンテナの壁は断熱仕様を施し、外部の温度が室内に影響しないようになっており、省エネ空調ができるだけでなく、植物の生長に合わせた最適温度を的確に調節することができる。
面積約30平方メートルのコンテナ1つで、年間約1万8千株のレタスや小松菜を収穫することができ、高収穫といえる。こうした「植物工場」の最大の利点は、地域的な環境の影響を受けないことである。寒冷地であろうと、砂漠地帯であろうと、安定した栽培ができ、高い収穫率を得ることができる。