『タンタンの冒険旅行記』
当初、『タンタンの冒険旅行記』の作者のエルジェ氏が張充仁氏との協力を申し出、タンタンを中国の舞台に登場させることになり、張氏は自身の実際の経歴をそのまま書いた。彼は最初にヨーロッパで「日本人が中国を侵略している!日本帝国主義を打倒しよう!」と叫んだ中国人であり、また最初に日本の西洋に対する共栄が捏造であると暴露した中国人でもあった。西洋世界は、ようやく日本人の中国における虐殺や強奪、悪事の限りを尽くしていることを知り、「中国張」の祖国が無残にも蹂躙されていることを知り、激震が走った。
漫画の中の「中国張」は、駐ベルギー日本大使をも動かした。大使は漫画を連載していたベルギーの最も影響力を持つ新聞紙『二十世紀』の責任者に外交上の抗議をしたのだ。また、かつて八国連合軍の将軍であった「ベルギー中国友好協会」の名誉会長で中国通の奉杰思氏から、新聞社の責任者に対し新聞の停刊を命じさせ、それに応じなければ、日本はハーグ国際司法裁判所に告訴することになると警告した。張氏は新聞社の責任者に、自身が漫画の中に反映させたことは全て中国の現実であり事実であると主張し、もし間違いがあれば、自分一人でその責任を負うと訴えた。これにより、『タンタンの冒険旅行記』中国篇は連載を継続、その影響は今に至っている。
あれから百年近くが過ぎたが、中国文化の広がりや影響力は、ある面において、一冊の漫画、一人の「中国張」にも及ばない状態であることは、深く考えさせられるところである。ヨーロッパ人の目から見て、日本人は長きに渡って自身の文化を大切にし、その継承や保護に力を尽くし、代々それを広めてきた。そのため、西洋人は日本文化がアジア文化の由緒正しい源であり、取って代わることができないものだと思っている。
前駐フランス中国大使の呉建民氏がこう言っている。国際的に、ある種の外交的見方がある。それは、一流の国は文化を輸出し、二流の国は人材を輸出し、三流の国は商品を輸出するというものである。世界の舞台における一国家の栄光と恥辱は、表面的に見れば、その国家の様々な輝きを放つ「実力」であるが、その全ての「実力」の核心部分となるのが、文化的影響力や意思疎通ではないかと私はずっと考えている。文化の精髄は、心に浸透し、感情的交流を行い、その思想を表すことができる。文化によってもたらされる効果は、外部的勢力ではなかなかそれを覆ったり、圧倒したりすることができないものである。(文=高遠)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年01月02日