日本は事前災害、特に地震の多い国だ。何度も自然災害に立ち向かう中で日本人は健全なメカニズムを徐々に確立してきた。ここ十数年の日本政府の地震災害への対応からこのことがはっきり見て取れる。日本は地震多発国ではあるが、50年代以降、地震による大きな被害はそれほどなく、死傷者が最も多く出たのは1960年のチリ地震で引き起こされた津波の時だった。
今回も、津波の被害がなかった地域では救援活動が滞りなく行われ、これまでの報道を見る限り特に大きな問題は起きていない。自衛隊の出動にしても、各地は真っ先に自衛隊による支援を要請して今のところ社会的混乱は起きておらず、政府も情報公開をうまくやっている。
ところが現状の解決策では解決できない新しい状況が常に起こる。今回の地震は、日本で地震観測が始まって以来最大のマグニチュード9.0の地震だったが、地震よりも津波による被害のほうが大きかった。7メートル以上の津波を前に、従来の対応措置はまったくといっていいほど通じなかった。
津波は多くの生命と財産を奪った。東京電力の福島第一原子力発電所で起きている問題にも人々は不安を抱いている。原子力発電所は「絶対的安全」が要求される。地震国家である日本は原子力発電所を設計する段階でその安全性に十分注意していたはずだ。今回の地震で、原子力発電所自体には物理的被害がなかったことは立証されているが、日本は原子力発電所の安全性を考える上で、物理面だけを考慮し、地震によって電力網が破壊されることに注意していなかった。地震発生後に自動停止した原子力発電所は電源を失い、原子炉を運転・コントロールすることができなくなり、炉心溶融という大事故を引き起こした。原子力発電所はいまだに完全制御できない状況にある。