文=細川裕子
以茶会友
えも言われぬ美しい薄紅色の桜が満開に咲いていた3月7日より11日までの計5日間、雲南省昆明市並びに大理市にて日中茶文化交流会が催されました。雲南省はお茶やお米の原産地とされていて、一部の少数民族と日本人のDNAは類似しているという説もあり、日本人にとって心の故郷ともいえる地で、不思議なご縁により私は通訳として出席させていただきました。
酒井哲夫団長(右)と張宝三会長の通訳を担当する筆者 |
福井県からは酒井哲夫氏(社団法人日中友好協会副会長・NGO福井県日中友好協会会長)を団長として、茶道家や書家の方など計15名が参加されました。現地では、お抹茶のお手前も披露されました。雲南省側は張宝三氏(前雲南省人大常務副主任・雲南省プーアル茶協会会長)が代表をお務めになり、茶芸師の方が舞のように優雅な茶芸をご披露されました。双方ともに茶を喫し、お互いの国の茶文化に触れ、初春の茶席を楽しみました。その後、書道交流も行われました。愛好家や文人墨客の方々が集い交わり、日中の茶文化に脈々と流れる哲理や未来へのありようなど、芸術談議に花を咲かせました。
茶文化交流シンポジウム | 中日双方の書法の交流も行われた |
日本の茶道を披露し、現地の人たちにも体験してもらった |
一期一会
大理師範付属幼稚園を訪問した際には、大自然の恵みの中で生活されている先生方や児童から温かい歓迎を受けました。また、平素より徳育教育として茶芸のお稽古に励まれている鍛錬のご成果を見せていただきましたが、その生き生き、はつらつとした子どもたちの笑顔には、こちらも顔がほころび、健やかな成長を願わずにはいられませんでした。また、世界文化遺産の麗江古城がある麗江市、彫刻の町剣川県、山河の美しい祥雲県など、行く先々で中国の方々より心からのおもてなしをいただき、本当に素晴らしい旅となりました。
茶馬古道でも保存状態が比較的良好な古い交易所の沙渓寺登街 |
大理師範付属幼稚園の園児たちによるペー族(白族)伝統のもてなし「三道茶」 |
麗江ナシ族(納西族)のトンパ文字 | 古い宿場の祥雲県南駅 |
いにしえから続く日中の縁
私が特に感銘を受けたのは、大理州政府関係者や地元の方々のご好意で、明代に日本から志を立て、この地で示寂された高僧の慰霊塔を参詣させていたいたことでした。この慰霊塔は大理市近郊の龍泉峰にあります。中国の方々のこのようなご寛大でご寛容な心に感謝したいと思います。いにしえよりさまざまな方がさまざまな思いや希望を胸に海を渡り、中国の方々と相携えいたわり合って生きてきたことに思いをはせ、同時に両国ががこれからも末長く心を寄せ合いともに手を携えていくことを、心より願わずにはいられませんでした。
一行は大理市で日本四僧塔に献花をした |
茶を崇拝する東洋精神
唐代、茶道の鼻祖陸羽が『茶経』を記し、その後奈良時代に遣隋使によりお茶が日本に伝わり、禅など精神文化とつながり、茶聖千利休が茶道を大成されました。近代に入り岡倉天心(心の故郷として福井を愛した)が先人の茶を踏襲し『茶の本』(The Book of Tea)を著しました。現在でも多くの国で翻訳され愛読されています。
当時、西洋は東洋より勝っているという見方が世界の潮流であった時代に、岡倉天心は東洋には茶道という素晴らしい文化があることを紹介しましあ。身分の貴賎を問わず炭を囲み一服いただき、宇宙と和しようと努める。そのような東洋精神は西洋より勝っているということを、世界に向かって説かれたのは、非常に興味深いことです。
今私たちに最も必要なもの、それはこのような精神ではないのでしょうか。
プロフィール
細川裕子 (ほそかわ ひろこ) 福井県出身。中国人民大学法学院知的財産法専攻博士研究生。2007年公費生として中国人民大学法学院修士課程に入学、2009年博士後期課程に進学。
人民中国インターネット版 2011年4月14日