中国社会会学院日本研究所所長 李薇
地震と津波とともに、放射能漏れの被害に遭った日本の国運は下がってしまうのではないか?これは筆者が最近よく耳にする議論だ。いわゆる日本の国運とは、今後成長する活力があるかを指す。発展の活力を制約している日本の政治、経済といった構造問題は90年代初めのバブル崩壊後に浮き彫りとなった。
まず、政治構造では、選挙制度と政治家の資質が日本の発展を制約している。1993年以降、自民党政権にしても、民主党政権にしても政権維持を最高の政治目標に掲げ、国家発展の道に対する長期戦略に乏しい。日本の政党政治は低級な選挙のテクニックを追い求め、世論利用と世論に操作される深みにはまってしまった。こうした現象を招いた原因は、▽冷戦終結後の意識形態の対立が弱体化し、与野党が保守的になったことや、▽小選挙区制度によって候補者が世論づくりに依存するようになったこと――があげられる。日本の国会議員は職業色が強く、「政治家」は国の利益を追求するために政治の道に進むのではなく、一種の職業として政治家を選ぶようになっている。「政治」は国会議員にとって、「職業」を意味するのだ。そのため、日本の政治家は国を治める資質に欠ける。
一方、経済構造は、財政赤字と高齢化問題が日本の今後の発展を制約する障害となっている。日本の財務省の統計によると、大地震発生前の長期債務残高は2010年末でGDPの181%の869兆円に達した。財政支出の中でも、毎年1兆円ペースで増え続ける社会保障給付費が最大の負担となっている。現在、日本の労働人口は毎年1%ずつ減少している。そのため日本の潜在成長率は80年代の4%から21世紀初めには1%に落ち込んでいる。人口構造がさらに悪化すれば、経済の潜在成長率もさらに落ち込むことになる。
地震、津波、原発事故という戦後最大の危機を前に、日本の政治指導力と経済対応力が問われている。日本政府の救援方式は「迷宮式」と呼ばれている。事実、さまざまな問題の背景に、こうした政治体制問題が浮き彫りになりつつある。
今回明らかになった日本の構造問題は、対外開放度を増すことによって解決できる。日本は体制や意識面で封鎖的な社会だ。国内外を隔てる意識が濃く、目に見えない壁をつくり、国内の共同体の間でも、国家対外国にしても、制度や心理面で封鎖的だ。今後、日本がオープンな社会を築けば、活力ある社会が形成され、数々の弊害が改革されていく。一例としては、移民政策を開放し、人口構造を変化させ、移民の起業を奨励し、投資機会を提供するなどがあげられる。
日本が今回の危機で自国の問題に気づいたなら、改革を決行することだ。そうすれば、ピンチをチャンスに変えることができる。さもなければ、日本は本当に沈没していくしかない。資源が少ない上、超高齢化を抱える日本は将来、世界において中等国家にならざるを得ないだろう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年4月19日