私のような国外の記者が彼らと会うとしたら、彼らは仕事帰りの酒場でビールを飲んでいる普通のサラリーマンという形でわれわれの前に現れるかもしれない。ある専門の知識については詳しいが、日本の重要な国事、世界の変化などについては、知っていることはわれわれより少ないかもしれない。ほろ酔いの中で彼らは電車に乗って帰宅していく。
日本はヒーローが出にくい国になったようだ。首相も草の根出身。官僚を支配するのにパフォーマンスは少なく、怒った時には朝早く首相官邸から車で東電本社に乗りつけ、大声で企業の上層部を叱る。首相もまた、普通の企業の経営者がイライラするときとあまり変わりはない。
東京の街ではすでに迷彩服を着て大声で叫ぶようなタイプの戦闘員はあまり見かけなくなった。同じような黒い街宣車でいろんな旗をかかげて、そこで演説する人も背広を着ている。政党政治家の選挙キャーンペンとそう変わらない。
私はこれから、このような社会で暮らしている具体的な日本人を書いていくが、第1回はどうしてもこの「匿名」の日本人しか書けない。ごくありふれた日本人は、時代の要請を受ければ身を挺して義務、使命でその仕事を成し遂げる。義務や使命は名誉、金銭より高い。おそらくそれは匿名の日本人の特徴ではないか。
自然災害がやってきたときには、日本の普通の人は、他国の人をびっくりさせるような冷静さ、秩序をもって対処している。このことは、また多くの日本人の「匿名」という特質と大きく関わっているかもしれない。
「Billion Beats 日本人が見つけた13億分の1の中国人ストーリー」より
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年4月22日