英フィナンシャル・タイムズ紙は6月29日、「日本政府は東京電力を救済すべきでない」とする評論を掲載した。
日本政府は東電の救済策成立に全力で取り組んでいる。東電は事故が起きた福島第一原発の持ち主だ。しかし、救済策成立に成功しても、支払う代価はあまりにも大きい。救済することは、寛容な道をまた一歩進むことと同じだ。寛容は日本の原子力産業を機能不全に導いた最大の要因である。
東電が原子炉の炉心溶融で被害を受けた人たちに支払う賠償金がいくらになるかは、まだわからない。4兆から5兆円になるという見積もりも大げさな額ではないだろう。この見積もりが正しければ、東電は破産するとも考えられ、そうなれば債権者や事故被害者への支払いはできなくなる。最終的な額はこれほど高くないとしても、この問題をめぐる不確定性により、東電の支払能力に対する信用に影がたちこめている。スタンダード&プアーズは東電の社債を「ジャンク級」に下方修正した。
日本政府は、東電が支払い不能に陥る事態を避けようと懸命だ。関連法案では、賠償金は電力会社が出すが、政府が保障するとしている。これは、政府がヘアカット(債務減免)を行わず、債券保有者に賠償を負わせないことを承諾するものだ。
政府の東電に賠償責任を負わせるという決定を考慮すると、株主の元金がほぼなくなり、債権者が債務帳消しを求められるという状況下で、債券保有者を保護するというやり方は道理に合わない。東電には5兆円規模の社債と4兆円規模の借り入れがあり、債務を再編すると巨額の資金が集まり、納税者の負担を減らすことができる。再編に東電傘下の送電網の売却を盛り込み、発電と送電の分離を促すべきだ。