◇ドイツ「脱原発」議論、10時間生放送
神奈川大学の大林教授は「福島第一原発の事故を受け、ドイツなど欧州諸国において、脱原発依存政策が着々と採択され始めている。だが事故発生国である日本では未だに、この問題についての方針が定まっていない」と述べている。
福島第一原発の事故の発生後、ドイツ、スイス、イタリアでは原発廃止の方向性を示す政策が、素早い動きで取り決められている。
だが、原発を廃止した後、如何に電力供給を保証するかという現実問題が立ちはだかっている。ドイツなど「脱原発派」の国では、将来、電気料金の値上げや電力の供給不足といった問題を避けて通れないだろう。代替エネルギー源の開発に尽力することが、電力が大幅に不足した際の補てんの役割を果たすだろう。また、如何に電力供給を保証し、経済を支えていくか?といった問題の解決法にもなっている。
ドイツ在住のジャーナリスト・永井潤子氏は、ドイツの原発問題を巡る議論を見た感想を、月刊誌「未来」の掲載記事にしたためている:(ドイツ)メルケル首相は福島原発の事故直後に有識者17人による政府諮問機関(倫理委員会)を立ち上げた。原発政策に関して倫理委員会は「2021年までに脱原発が可能」とする報告書をまとめ、メルケル首相に提出している。その後、10時間以上に及ぶ議論の様子がテレビで生中継され、脱原発政策が採択されるまでの全過程が国民に公開された。この中継放送が行なわれた10時間、私は感動のあまりテレビの前から離れられずにいた。
永井氏は「これほど大きな被害を出した日本において、原発問題に関する公開議論の場が今まで1度も設けられていない」ことに憤りを感じている。
評論家の斉藤氏は「経済産業省のウェブサイトを見ると、原発の重要性が切々と語られている。また、原発をなくせば雇用などで大きな影響が出る、などと正当論の如く言っている。原発関連団体は数多くの官僚の退官後の天下りの巣窟であった。官僚にとって原発推進は、自分らの『雇用機会』を確保しておくことが目的であって、決して日本のためなどではない」と述べている。
原発に詳しいある官僚は「原発問題について、ドイツは、聖人君子のような顔をしながら、原発大国フランスから電力を輸入する、などという腹黒い一面も見せている。隣国から電力を買うのと、自国の原発で発電するのとどう違うのか?」と述べている。彼からすると、「ドイツは立派な志を持っているように見せかけて、実は優等生の仮面をかぶっているだけ」らしい。
東京電力側は「原発がなくなれば、日本の国際的な地位も揺らぐし、景気回復にも結び付かない」と弁明している。
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