(三)
日本では、サッカーの先進国となるまで、20年もの歳月をかけることが許された。特別な機器を用いた訳でもなければ、特殊な訓練をした訳でもない。その他のサッカー先進国のやり方をただ真似ただけである。言うなれば、スポーツ界の一般常識にのっとっただけに過ぎない。
西側社会には「No Need to Reinvent the Wheel(車輪の再発明をすべからず)」という慣用句がある。すでに確立されている技術や解決法があるにもかかわらず、わざわざ最初からやり直そうとして時間を無駄に過ごすべきではない」という意味が含まれている。
だが、中国のサッカー界は、何度も何度も車輪の再発明を試み、そして、奇怪な形状の車輪を発明した結果、その骨組みまで壊してしまっている。どうすればよいだろうか?子どもでも分かることである:車輪は従来の丸いものを使えばよいのだ!
そう、一般常識に基づけばよいのだ。
日本のサッカーは、特に何かをしたがために急激にレベルアップした訳ではない。たんに、プロリーグを重視し、若い選手の育成に力を入れただけである。そして、サッカー先進国のやり方を学ぶために、指導力のある外国人コーチをまねいただけに過ぎない。プロリーグが始まれば、何もかもを管理下に置くことはならないと悟った日本サッカー協会は、社団法人Jリーグにその管理運営の権利を委ね、協会の管轄から独立させた。
そうすることは決して難しいことではなかったはずだ。最終的に、こうすることが一般的だと誰もが思うはずだ。だから、中国から誰が視察に行ったとしても、日本のサッカーをレベルアップせしめた「秘伝の技」をお目にかかることはないだろう。日本が20年間貫き通した「スポーツ界の一般常識」を見せつけられるだけである。
そのため私も大きな期待をまたもや抱いてしまう。中国サッカー協会が、そうした「一般常識」に忠実になり、10年20年30年という長い歳月をかけて中国のサッカーを発展に導けば、管理者が名声を求めないことが管理者の功績として評価され、将来の成功につながる「正のスパイラル」を築くはずだ、と。そうなるのであれば、官僚や記者による日本視察も決して無駄ではないと言える。
中国サッカーを良き方向へ導くためには、一般常識にのっとって、あれこれと方針を変えることなく貫き通すべきなのだ。(文=CCTVキャスター・白岩松)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年11月13日