share

円高の悲喜劇 日本企業が海外事業拡大を加速

japanese.china.org.cn  |  2011-11-14

円高の悲喜劇 日本企業が海外事業拡大を加速。

タグ:国債,円資産,対円為替

発信時間:2011-11-14 14:31:52 | チャイナネット | 編集者にメールを送る


(中国網:張世琦)

「魅力的」な円資産

「10年物国債利回りは1%前後で、実はそれほど低くない。日本の名目金利は世界で最も低いが、長期的なデフレとなっている。これは投資利益をほぼ全て回収できるということだ」。円の金利裁定取引を取り扱うイギリスの債券ファンドの責任者、トレイシー氏はこのように述べた。

さらにトレイシー氏は、「主要7カ国(G7)の国債の中で、日本を除いて実質利回りがプラスなのはイタリアだけで、米国はマイナス2%前後となっている。前者はリスクが高すぎて手を出せず、後者はリスク回避のために『保有』している」と、冗談ながらに話した。

バンク・オブ・ニューヨークの統計によると、10月31日から11月4日までの日本の確定利付証券への投資は、過去1年の平均額の2倍に達した。また日本の財務省のデータでは、今年下半期以降、外資による日本債券市場への投資は安定した伸びを示し、1月当たり平均の購入額は約2000億円(約26億ドル)となっている。

海外投資家から円資産に人気が集まったことで、ドルの対円為替レートは7月初めに80円台を切った後も下落し、10月31日のシドニー外国為替市場では一時75.32円まで下がり、第二次世界大戦後の最安値を更新した。

輸出企業が「円高の恐怖」に直面

「トヨタ自動車は困難な時期にあり、対策の一つとして、コストを削減し円高の影響に対応し、一部の生産を海外に移すという方法がある」。ポルトガルでイベントに参加したトヨタの小沢最高財務責任者(CFO)は、同社の「円高の恐怖」に深い懸念を示した。また豊田章男社長も、「壊滅的なダメージ」と円高による影響を形容している。



トヨタによると、東日本大震災による同社の損失は約1600億円(約21億ドル)に上ったが、この額は円高による減益2500億円より少ない。さらにこの予測には、タイで起きた洪水が同社にもたらす影響は含まれていない。

トヨタと同じように、ホンダや日産などの自動車大手、ソニー、東芝、パナソニックなどの電機メーカーも「震災の恐怖」と「円高の恐怖」に続いて、近ごろ「タイの洪水の恐怖」に直面している。

先ごろ発表された第3四半期の業績を見ると、ホンダは続く円高が原因で前年同期比56%減益、東芝は同19%減益となり、ソニーは270億円の赤字を計上した。パナソニックは、円高の影響を受け、本年度は過去最大の赤字になる見通しだと発表。

日本の経済産業省が10月に行った調査によると、日本の大手製造企業の15%が「ドルの対円レートが76円の低水準で推移し続ければ、20%以上の減益になる」と見ている。

日本の輸出企業と製造業に圧力がかかっていることを受け、日本政府と日本銀行は昨年9月以降、わずか1年あまりで4回のドル買い・円売りの為替介入を実施してきた。ところが国際市場における外貨取引量があまりに莫大なため、日本政府の為替介入措置は一種の「脅し」の効果しかなく、円を一時的に下げたものの円高傾向を変えることはできなかった。それだけでなく、日本の外貨準備高を急激に増やし、外貨準備のリスクとドル下落のかかわりを強め、日本は「ドル鋳造税」を自発的に納めていることになる。



日本企業が海外事業拡大を加速

「現在のような拡大のチャンスは本当に貴重で、これを逃せば、10~20年は事業拡大は難しいだろう」と話すショッピングセンターを運営するイオンの千葉清一グループ最高財務責任者(CFO)は、円高メリットを前に拡大の野心を見せた。

過去5年間、円高と新興市場の台頭の力を利用し、イオンは海外事業をかつてない速度で拡大してきた。同社は2013年までに、中国、ベトナム、カンボジアへの新規投資の割合を2009年の8%より大幅に高い25%にする方針を固めた。

日本のアパレル大手・ファーストリテイリングの柳井正CEOは先日、円高によって株式市場が低迷したことで、今は欧米のさらに大きなライバルを合併・買収(M&A)する良い時期だとの見解を示した。同社は2020年の売上高を2010年の6倍の5兆円にすることを目標に掲げている。

また、今年8月に国内で電子書籍事業を開始したインターネット通販大手の楽天は、今月に入ってカナダの電子書籍販売大手Kobo(コボ)社を3億1500万ドルで買収することを発表し、海外事業の拡大を全面的に進めている。

10月下旬に打ち出された円高対策のプランによると、日本政府は日銀と関係幹部による専門組織を作り、円高を利用して企業の海外M&Aや資源買収を支援する方針。

しかし日本人専門家は、グローバル化政策が日本の産業空洞化を深刻にし、経済成長の内在的動力を弱めることを懸念している。したがって、円高は「悲喜こもごも」だが、全体的に「悲は喜びに勝る」といえる。

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年11月14日

Twitter Facebook を加えれば、チャイナネットと交流することができます。
中国網アプリをダウンロード

日本人フルタイムスタッフ募集     中国人編集者募集
「中国網日本語版(チャイナネット)」の記事の無断転用を禁じます。問い合わせはzy@china.org.cnまで