「魅力的」な円資産
「10年物国債利回りは1%前後で、実はそれほど低くない。日本の名目金利は世界で最も低いが、長期的なデフレとなっている。これは投資利益をほぼ全て回収できるということだ」。円の金利裁定取引を取り扱うイギリスの債券ファンドの責任者、トレイシー氏はこのように述べた。
さらにトレイシー氏は、「主要7カ国(G7)の国債の中で、日本を除いて実質利回りがプラスなのはイタリアだけで、米国はマイナス2%前後となっている。前者はリスクが高すぎて手を出せず、後者はリスク回避のために『保有』している」と、冗談ながらに話した。
バンク・オブ・ニューヨークの統計によると、10月31日から11月4日までの日本の確定利付証券への投資は、過去1年の平均額の2倍に達した。また日本の財務省のデータでは、今年下半期以降、外資による日本債券市場への投資は安定した伸びを示し、1月当たり平均の購入額は約2000億円(約26億ドル)となっている。
海外投資家から円資産に人気が集まったことで、ドルの対円為替レートは7月初めに80円台を切った後も下落し、10月31日のシドニー外国為替市場では一時75.32円まで下がり、第二次世界大戦後の最安値を更新した。
輸出企業が「円高の恐怖」に直面
「トヨタ自動車は困難な時期にあり、対策の一つとして、コストを削減し円高の影響に対応し、一部の生産を海外に移すという方法がある」。ポルトガルでイベントに参加したトヨタの小沢最高財務責任者(CFO)は、同社の「円高の恐怖」に深い懸念を示した。また豊田章男社長も、「壊滅的なダメージ」と円高による影響を形容している。