近年、中日間のトラブルや紛争は、海洋領域におけるものが少なくない。釣魚島漁船衝突事件、対中戦を想定した「尖閣奪還軍事演習」等がそうである。事件発生後は、双方とも外交交渉に留まり、それぞれ自身の立場を表明するか、或いは相手への不満や非難の意を表明するだけで、問題の実質的・根本的内容について深く討論することなく、白黒つけられず、懸案となり、そのままうやむやになってしまっている。こんな状態が長く続けば、両国間の矛盾は日増しに深くなり、紛争が深刻化する恐れがある。
両国は専門家を集め、過去30年来の歴史を振り返り、過去に発生した問題やトラブル、紛争を整理し、その中の主要な問題について討論すべき時に来ている。現在のように、一方的な理解により、盲目的に相手を非難し、緊張状態を高めることは避けなければならない。
国際海洋法についても、深い討論と理解、そして合理的解釈が必要である。例えば、専属経済区における軍事訓練をどのように認識するかということについては、沿海諸国の制約を受けないという見解もあれば、それと全く正反対の見解もある。深く研究すれば、法律的に検討すべき問題点が浮かび上がってくる。専属経済区の中核は平和的利用であり、他国が事前通知や同意なしに軍事訓練を行なうことは、沿海諸国の安全を脅かす可能性があるため、専属経済区制度の平和的利用原則に抵触するものと解釈することができる。
この類の理論的問題を明確にしないかぎり、公平な線引きは机上の空論でしかない。中日両国はすでにこれらの分野において討論を開始しており、大きな効果を上げている。これを継続し、討論を重ねることで問題を明確に、正しく理解し、これまで不明瞭だった概念をクリアなものにすることで、両国関係の健全な発展につなげていけることを切に願う。
中日関係の強化には、人文、経済、軍事領域の協力以外に、科学技術の分野における合同研究の道を広げる必要がある。中米両国においては、前世紀70年代に太平洋大氣合同調査を行なった実績がある。中国国家海洋局と米国海洋大気局(NOAA)が合同で進めたもので、当時、中米両国は外交関係を結んで間もなく、研究員たちは、そのほとんどが顔も知らない初対面のメンバー同士だったが、ひとたび海上調査が始まれば、団結して一つのチームとなり、緊密な関係になることができた。中米両国間では、今でも海洋領域において協力プロジェクトが存在し、太平洋では中国漁政と米国海岸警備隊が合同で法を執行している。ソマリア海域の護衛も、中国と米国、日本及び国際社会の軍事協力と見なすことができ、大きな成果を上げている。
1986年、中日両国は黒潮共同調査と西北太平洋海流調査を行なっており、海洋技術領域において大きな収穫を得たばかりでなく、頻繁な行き来や接触により、科学者や政府官僚の間で互いの理解と友情を深めた。当時も、モニタリング方法や調査データが正確なものかどうか、調査研究で得られた結論は科学的且つ客観的であるかという問題について、両国の意見が分かれていたが、国家海洋局、外交部と日本の科学技術庁、海上保安庁、水産庁、気象庁、外務省の関係は非常に友好的であり、現在の両国間の雰囲気とは全く異なるものだった。
中日両国間の海洋技術分野における今後の協力空間は大きく、海水の淡水化、海洋環境保護、海洋クリーンエネルギーの開発、風力発電や潮汐発電、波力発電の共同研究等、その内容は多岐に渡る。過去に完成できていないプロジェクトを続けて推進するもよし、新しい分野を開拓するもよし、中日共同調査に実際に携わった経験を持つ者として、私は当時の雰囲気を懐かしく思うと同時に、またその時のような共同研究に携われる日が来ることを心待ちにしている。
(著者:中国海洋発展研究センター研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年12月5日