映画の中の旧日本軍
◇童謡「ふるさと」、かられる望郷の念
渡部篤郎は、チャン・イーモウ監督の脚本を手に、何の悩みも憂いもなく中国での撮影に臨んだ。撮影前、何度も脚本を読み返し、過去の悲劇を自らの心に刻みつけたという。「この作品は、武力で平和は作れないことをみなに伝えているのです。脚本を読みながら、長谷川大佐の心の内や感情を、何度も繰り返し考え、イメージし、自分と重なるようにしてきました」と述べている。
渡部篤郎が演じる長谷川大佐は音楽を愛する教養人で、人道的な士官として描かれている。教会の古いピアノで「ふるさと」をソロ演奏するシーンもある。「撮影前、何度も何度も練習しました。古いピアノだったので音はよくありません。もともとピアノの独奏だけのシーンだったのですが、監督が急に、歌も加えようと言い出しました」と撮影当時を振り返る。その時、監督が渡部に命じたことは、感情を顔に出さず、毅然とした態度を保ちながら、長谷川大佐の心情を表現する、ということであった。
童謡「ふるさと」は、日本で長く歌い継がれている名曲である。遠く故郷を離れた人が自分の故郷を想う心情を上手く歌詞にたくしている。撮影で歌ったこの歌は、心の奥底に沁みたと渡部は言う。「撮影期間中、日本で大地震が起こりました。我々日本人数人は中国にいても常に日本の家族のことが気がかりでした。監督を始め、撮影チームみんなが我々のために撮影スケジュールを調整してくれ、我々が早く日本に帰れるよう段取りをつけてくれました」と語っている。渡部篤郎は、「映画には世界中の人たちをつなぐ作用がある。この素晴らしさは何事にも替えられないと思う」と述べている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年12月20日