インフラ整備へのODA拠出において、日本政府はたいてい何らかの条件を提示している。例えば、そのプロジェクト請負先は日本企業でなければならないとか、プロジェクトで用いる機器は日本製のものを使わなければならない、などといったことだ。そうした条件は、日本企業が関連諸国の市場に進出するための便宜を図るものであった。例えば、1990年代初頭から日本政府のODAを受けているベトナムでは、当時たった1社であった日系企業も2009年には374社にまで膨らんでいる。
数字となって表われる経済的利益と比べて、対外援助が日本の国益としてもたらすその役割はより長期的な視点で見なければならない。日本は対外援助を通じて日本のイメージアップを図り、国際社会における地位や発言力を強化させ、被援助国における好感度を向上させてきた。
戦略重視の米国やヒューマニズム的な思想に基づく援助を行なう欧州諸国と比べると、日本のODAは道路、橋梁などの交通インフラ整備や医療・衛生、教育、上下水道設備、食の安全、人材育成などといった国民の生活に関わる領域が多く、発展途上国が真に必要な援助需要を反映していると言える。