文=コラムニスト・中川幸司
(前回からの続き)
・・・・・・・・・・・・・・・・マグロ危機といえば、中国人が寿司を好きになり(とはいっても1990年代後半から)、そして生食のマグロを好むように成り、マグロの輸入量が増え、そして国際価格が上昇している、というニュースはつい最近のニュースでした。これと同様に、もしこのまま、チョコレートメーカーの企業努力の結果、中国にチョコレートを日常的に食す文化が密に浸透して行ったら・・・・チョコレートの主たる原料である「カカオ豆」の国際価格の行方が気になりますねぇ。
カカオ豆の全世界生産量でみますと、1980年からの30年間でおよそ2,5倍になっているようです。言ってしまえば、2.5倍程度であったということです。これが、カカオ豆農園にどれだけの余剰生産能力があるのかわかりませんが、工業製品と異なり農作物でありますから数年で倍増というのは難しそうですよね。国別ではアフリカで断トツで多く生産されています。さて、アフリカ、中国、天然資源・・・ときいて、またもうひとつキーワードが見えてきますね。そう、資源獲得競争が潜在的課題のひとつとなってきそうです。
現在、多くの日系企業・中国企業のチョコレートメーカーによって、バレンタインデーを通じて、チョコレート食文化の中国内での浸透が成功してきました。そして、その成果は中国内でも統計的数字によって裏付けられてきました。現在のところ、まだ原材料資源の獲得に国家的に苦慮するほどの市場規模ではありませんが、14億人の毎年10%以上の需要拡大を鑑みれば、将来的なカカオ豆原材料の積極的獲得行動は中国の行く末となり、また結果として、国際的なカカオ豆資源争奪競争もその道筋としてみえてきます。いま現在、天然資源(工業用鉱物・食物含む)の獲得競争は世界の各所、多様な産業で問題となり、また中国の国際的な影響力は非常に強く、中国の資源獲得の動静は世界各国がみまもるところとなっています。また、中国以外の国からすれば、その中国への牽制のために計画的な行動をとるということも必要でしょう。その時に、カカオ豆というのも、ひとつの競争の種になってしまう可能性を秘めてきました。
中国の天然資源獲得のためのアフリカ進出は、いまのところカカオ豆獲得の目的とは直接リンクしていないでしょうが(カカオ豆の中国国内需要増加を優先にアフリカに資源獲得のために進出はしていない)、中国が他資源のためにアフリカ進出をすすめればすすめるほど、中国はアフリカ諸国との関係が密になり、世界が気づかないうちにカカオ豆の重要供給地域もまた中国が将来支配しているという流れになってしまうかもしれません。
誰もが食べてニッコリするチョコレート、大切なひとのためにプレゼントしたチョコレートのために、『チョコレート戦争』などという寂しい結末にならないように、その他の天然資源と同じように、チョコレート(カカオ豆)は、いまのうちから世界各国が調整の議題に上げて欲しい資源のひとつであるんじゃないかな、と思います。
「チョコレートを平和の使者とするか、戦争への死神とするか・・・。」2月14日・・・そんな風に壮大に考えてみる僕なのでした。
とにもかくにも皆さん、チョコレートを食べると自然に笑顔になるそうであります。チョコレートを食べてハッピーな気分になりましょう!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年2月21日