福島第一原発の放射能漏れ事故から1年が経つ。しかし原発付近に住む人々は、今なお不安を抱えている。
放射能に詳しい専門家は、福島原発の放射能漏れが原子力発電史上最も重大な事例のひとつであり、低レベル放射線が長期的に人体にどの程度影響を及ぼすのかが明らかになるものだと言う。しかし住民にとっては、前例のないものがもたらす不確定性が、不安と恐怖の要因となっている。
見えない敵
太田芳子さんの住まいは福島第一原発から約60キロのところにある。窓はなるべく開けないようにしており、洗濯物は外に干さない。放射能が幼児に与えるダメージを恐れて、娘には子供を産まないように警告している。
太田芳子さんは「政府の人はいつも『直ちに健康に影響を与えるものではない』と言う」と言う。「しかし10年後、20年後のことについては何も言わない」。
「ここには住めない」と彼女は言う。「でもまだここに住んでいる」。