文=コラムニスト・陳言
日本の景気低迷は、東京の地下鉄に設置された広告からも見て取れる。各駅の広告掲載スペースの約3分の1が空白となっており、広告により彩られた壁に「傷跡」を残している。
一般的な日本人は欧州の絵画に対する造詣が深く、主な流派や画家等について口にすることができる。これは日本人の教育と関連しているが、東京の街で見かける広告からも、日本人の教養について知ることができる。
日本で現在よく目にするのは、三菱一号館美術館が主催するバーン・ジョーンズ(1833-1898年)展に関する広告だ。炎天下の中クーラーのきいた地下鉄に入り、安らぎのひとときを表現する同広告を目にすると、羨ましさ余って絵全体が心に深く刻み込まれるだろう。
電車に乗ると、ロシアの国立美術館やベルリン美術館等の、日本での展示会に関する広告を目にすることができる。実際に足を運ぶ時間がなくても、近現代の絵画が使用された広告パネルを見ることで、絵画の特長や展示物の内容を理解することができる。日本国立近代美術館等、日本国内の美術館の広告も、地下鉄の中で大きなスペースを占めている。これらの美術館の展示内容について知ることはできないが、現代的なデザインの日本近代美術館では、質の高い展示物を楽しむことができるだろう。
美術館の広告が目を楽しませる他、各メディアによる広告も多い。これは筆者が、大学・政府機関・大企業に取材に行く機会が多いためだろう。近年、日本の新聞の発行部数が減少しており、定期購読者が少なくなっている。新聞社は他社の広告掲載が本業であるが、今や自社の宣伝を開始しているほどだ。
これらの文化関連の広告の他に、一部の探偵事務所も広告を掲載している。これらの探偵事務所は、借金取り立て、不倫相手の調査、身元調査等を手がけている。日本にはかつて「非人」と呼ばれる、動物の死体の片づけや死刑執行を強要される身分が存在した。先祖に「非人」を持つ家庭に対しては、娘を嫁がせたくないという人が多い。東京ではそれほど深刻でないが、大阪では企業が人材を募集したり、家族が結婚する場合に、探偵事務所に調査を依頼することがある。
しかしながら、広告掲載スペースの空白が目立つようになっており、今後も空白であり続けるかのではないかと懸念してしまう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年7月19日