「集団」に対する概念はさておき、個人の習慣の中に原因があるとすれば、中国人の「個人空間」に対する意識の低さが挙げられる。米国の人類文化学者のEdward T. Hall氏によると、人と人の間には4種類の「距離」に関する関係、つまり「親密な距離」(15−45㎝)、個人的距離(45㎝−1.2m)、社交的距離(1.2m−3.6m)、公衆の距離(3.6m以上)があるという。人と人の関係により、保つべき距離は自ずと異なる。関係が親密でないにも関わらず、この距離を詰めようとするならば、他人の「個人空間」を侵すことになる。上述した大声で話す、一定の距離を保たない等の行為は、他人の空間を侵害する際の「手段」となるのだ。
厄介なことに、各国の「個人空間」の範囲は異なっており、複雑で分類しがたい。日本の公共の場であれば、人々は離れたまま礼儀正しく交流する。しかし飲み屋で一杯やった後、人との間に距離を保とうとするならば、相手から嫌われてしまうだろう。
もちろん、中国の観光客は日常生活で「個人空間」を気にすることはあまりないのだから、それを考えすぎる必要はない。筆者の親戚もそれにまったく考えつかなかったため、悩むこともなかった。
中国人には自らの礼儀があり、それを続ければよろしい。日本だって必ずしも、「礼儀正しい」、「ルールを守る」とは限らない。日本の観光客は英国で嫌われるが、それは英国人の「個人空間」と「距離」に対する感覚が日本人より甚だしいものであるためだ。日本人が安全と感じる距離であっても、英国人にとっては侵害であるのだ。しかし中国人観光客も日本を旅行する際は、日本人と一定の距離を保つべきだ。適度な距離感も、決して悪いものではないのだから。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年8月21日