写真の1:シンポジウムの様子
写真の2:中国日本経済学会の会長で、中国社会科学院元常務副院長の王洛林教授
11月10日、厦門(アモイ)大学で、『アジア太平洋地域経済協力の新たな勢力構造における中国と日本』と題されたシンポジウムが開催される。中国社会科学院日本研究所経済研究室主任の張季風教授は、「日本との経済戦争において、中国が自分ひとりだけ損害を避けることはできない。冷静に思案すればわかることだが、日本にはまだそれなりに経済力が持っており、中国への依存度も皆が思っているほどは強くはない。そのため、経済制裁では日本を打ち負かすことはできず、互いに争っていては第三者に利益を横取りされる可能性もあり、中国をけん制し、市場の抑圧を狙うアメリカの戦略が思い通りに進むことを手助けしてしまうことになる」との見方を示している。
中日関係は今、政治分野ばかりか、経済活動にも影響が出る「政冷経冷」の状態にあり、中国と日本の経済・貿易に関するシンポジウムの開催は大きな注目を集めた。
専門家の観点:経済制裁は共に損を招く
昨今、大きな騒ぎになりつつある日本に対する「経済制裁」について、中国社会科学院日本研究所の張季風教授は「日本政府の自分勝手で荒唐無稽な茶番劇は、中国の人々の大きな怒りを買い、中日間の経済・貿易関係にも深刻なダメージを与えている。これは決して我々が望んでいた結果ではなく、日本政府の一方的な暴挙が招いた結果であり、日本政府は間違いを認め、すぐさま是正すべきである」と指摘し、「中国の人々も冷静になるべきである。経済制裁が日本経済に深刻な打撃を与えることは間違いないが、中国が被害を受けることも避けられない。協力すれば「ウィン・ウィン」関係を築くことができるが、対立すれば共に損害を被るだけである」と呼びかけた。
また、「中国の日本に対する輸出製品は、主にミドルエンド・ローエンドの消費財及び、中国で組立てを行う電気機械製品が中心である。短期的に日本の対中輸出が減少することは、日本経済にとっては大打撃であるが、致命傷には至らず、日本はある程度の調整期間を利用して、消費財の輸入市場や製品の組み立て市場をタイやベトナムなどの東南アジアに移転することができる。
一方、日本の中国向けの輸出品は、ミドルエンド・ハイエンド部品などの半製品、鉄鋼製品や電子デバイスなどの原材料、工作機械内などの生産設備が約6割を占めており、これらの製品の多くは他の国が代わりを務めることが難しい。経済のグローバル化が進む今日、日本と中国は互いに欠かせない存在になっており、日本製品の不買はすなわち、自国製品を排除することに繋がりかねない。経済制裁が日本経済に与えるダメージは深刻ではあるが、中国経済に対するダメージも小さくない。世界2位と世界3位の経済大国が互いに争って共倒れになれば、欧州の債務危機で既に鈍化し続けている世界経済へのマイナス影響は楽観できないものになるだろう」と張教授は強調した。
ここ数カ月間、中国国内における日系車販売台数が大幅に減少しているという報道を受け、現在、ネットユーザーの多くが「勝利感」に浸っている現象について張季風氏も持論を展開した。すなわち、中国における日系車の組み立て生産メーカーには日本資本だけの企業は存在せず、中国資本が通常少なくとも51%以上投入されている。生産台数の大幅な減少で中国側も同時に打撃を受けている。このため、張氏は冷静な対応をとるべきで誤って自傷行為に陥ることがないよう呼びかけた。