日本政府は7日、財務省の中尾武彦財務官を、アジア開発銀行(ADB)総裁の候補者に推薦すると発表した。同情報を発表した麻生太郎財務相は、「中尾氏はADB総裁の重責を担う、最もふさわしい人選だ」と語った。
この慌ただしい候補者推薦は、日本によるADB総裁の独占維持という狙いがある。黒田東彦ADB総裁は現在、日本政府より日銀総裁候補として指名されており、3月18日にADB総裁を辞職する予定だが、任期が3年以上残されている。ADBは1996年の設立以来、黒田氏を含め現在まで8人の日本人総裁が誕生している。
日本にとってのADBは、米国にとっての世界銀行、欧州にとっての国際通貨基金(IMF)のようなものだ。これらは各国が世界的な影響力を示すための重要な場である。さまざまな歴史的要因により、米国が世界銀行総裁を、欧州がIMF専務理事を、日本がADB総裁を独占するという「慣例」が存在する。
アジアが世界経済のけん引者になるにつれ、ADBの重要性も高まっている。ADBは地域性発展機構として、開発援助・金融協調などの機能を持っており、アジアの発展途上国・後進国に対して強い影響力を持っている。ADB総裁と内部の重要部門は、長年に渡り日本人によって占められており、日本のアジア外交の重要資源となっている。
一部のADB加盟国は近年、日本人による総裁独占に対して疑問を呈している。ADBの米国執行役員を歴任した華人の陳天宗氏は昨年5月、ウォール・ストリート・ジャーナル誌への寄稿文の中で、日本人によるADB総裁独占の終了を呼びかけた。
米国のアジア太平洋回帰戦略の影響を受け、ADBの国際的な政治・金融・経済構造における地位が高まっている。米国もまた、ADBを通じてアジア太平洋事業における影響力を示そうとしている。ADB総裁の人選に関しては、米国の立場も非常に重要だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル誌は、ADBの総裁推薦の現行制度は、日本にとって有利なようだと指摘した。候補者は総裁になるために、ADB理事会の過半数の投票権を獲得する必要がある。ADBの最大の出資国である日本、米国、欧州の加盟国、オーストラリア、ニュージーランドを加えれば、過半数の投票権に達する。