中国のエリート層の間では、古来より「君子に二言はない」という教育が存在し、一般人の間でも「口にした言葉は、まいた水と同じ」という、「覆水盆に返らず」の教育がある。しかし中国と同じ言葉のルーツを持つ日本の政界は現在、このような信頼を重んじる文化を重視せず、「撤回」の制度があるようだ。
一人の政治家は、自らの発言に間違いがあったと思った場合、もしくは世論の圧力に屈して謝罪せざるを得ないときに、メディアに対して自らの発言を「撤回する」と宣言する。このほど日本維新の会の共同代表、大阪市長の橋下徹氏は、この「政治ゲーム」に興じている。
橋下氏の慰安婦に関する発言の背景を深く掘り下げれば、それは橋下氏が故意に選択した対外的な話題であることが分かる。日本の一部の政治家、特に地方の政治家は近年、内政問題について発言しても反響が得られず、この全メディア・新メディア時代に人々の視線をひきつけられないことを感じている。かつて弁護士とテレビ番組の司会者の経験がある橋下氏本人は、このことを痛いほどよく知っているはずだ。
選挙を経て大阪府知事から大阪市長に身を落とした橋下氏は、日本の地方政権の改革について自分なりの観点と考えがあるとあちこちで主張している。橋下氏は日本に対して、現行の「都道府県制」から「道州制」に改正するよう明確に提案した。しかしメディアはこれを大々的に取り上げず、社会からも大きな反響は得られなかった。これにより橋下氏への注目度が下がり、一部からは「賞味期限切れ」との声があがったほどだ。そのため橋下氏の心情は、「焦り」によって表すことができる。