中国社会科学院日本研究所副研究員 金嬴
7月16日、筆者は北京で米国から来た友人と懇談した。彼は米国南カリフォルニア大のマスメデイア論の教授なので、まず米国のネット選挙事情を尋ねた。なぜかと言うと、今回から選挙活動でインターネットが解禁された参院選の投票日が近づいていたからだ。彼は2008年の米大統領選でのオバマ大統領を例に挙げ、大いに称賛した。続いて、筆者が菅直人元首相が安倍晋三首相を名誉毀損で訴えたというニュースを伝えると、彼はびっくりしていた。米国の政治家はブログでライバルを批判しないのか、と尋ねた。彼の答えは非常に興味深かった。大統領や党首クラスの大物政治家は自らそうした発言はせず、そうしたい場合は、「手下」にやらせる、ということだった。つまり米国の政治家はソーシャルネットを使う場合に、マナーを非常に重視し、自らの好ましいイメージを与えるためには、ライバルの体面にも配慮しなければならないということだ。
菅元首相は安倍首相を提訴するに当たって、個人的ではない利害得失を考慮したと思う。確かに矛先は現首相に向けたが、日本の政界に横行している悪性の言論風土が目障りだと思っている。彼から見れば、こうした状況が与える損害は選挙の公平にとどまらない。
中国の学者として、筆者は現在の日本の政治.外交に関する世論動向がネットで伝わることやネット選挙は、日本の政治に根本的な変化を引き起こしていることに注目している。目下、日本で「ネット発信力」という新語が流行している。中国にも同じような言葉があり、「ネット影響力」と言われている。実際に、二つ言葉の意味はほとんど同じで、「発信力」であれ、「影響力」であれ、知名度、注目度と支持率と直接的な関係がある。今回の参院選について、三大政党の党首の安倍晋三、海江田万里、橋下徹各氏を例に挙げて説明しよう。ツイッターで112万8104人のフォロワー(登録読者)を有する橋下氏、フェイスブックで37万3488人のフォロワーを有する安倍氏とわずか541人の海江田氏の間で、発信力の強弱とその差は一目瞭然だ。