さて、今回の参院選からネット選挙活動が解禁されたことに話を戻そう。この解禁は本質的に見て、日本の政治発信市場で起きた制限緩和の新自由主義改革だと考えている。現在、各政党、各党首、各候補の間でそれぞれの発信力は著しい差が見られるが、こうした差が選挙結果に大きな影響を与え、発信力の勝者が選挙の勝者になる傾向が顕著になった。不安を抱かせたのは、上述のように、安倍氏ら「勝者」が民意にひそむ凶暴な感情を挑発したことだ。そうした感情が日本国民の被害者意識を増幅させているらしく、その被害者意識が直接的に「既得利益の打破」「中国に対抗」「北朝鮮を制裁」という強硬な世論の背景に変化しているようだ。一方、中国のネット世界でも、「日本を懲らしめてやろう」のような激しい発言が随所に見られる。このような「空気」は中日間の「スモッグ」をますます重苦しくさせるだけだ。
一方、性質の違う「気団」にも気づいた。7月上旬、朝日新聞によるネット調査で、「ネットで発信力ある政党代表は誰か」という問いに、39%のネットユーザーが安倍氏を選んだが、これを上回る41%が「誰も発信力があると思わない」と回答した。参院選後、安倍政権の安定性は大幅に向上するだろう。しかし、私から見れば、中国にとって、安倍政権の長期化、または日本国内のネット上の「嫌中」ムードは「不愉快な現実」というより、むしろ混沌{こんとん}とした現実だと言えよう。「盤古(中国神話で天地開闢の祖)が混沌を破り、天地は初めて清らかになった」。中日関係の盤古はどこにいるだろうか。
作者のプロフィール:
金嬴
1973年生まれ、法学博士、中国社会科学院日本研究所副研究員。専攻はメディア社会学。著作には『密室と劇場――現代.当代日本政治社会構造の変遷』がある。2012年より、中国側代表として「中日ジャーナリスト交流会議」に参加している。
「人民中国インターネット版」 2013年7月30日