実際のところ、中日間が“戦争をせず歩み寄らない”ことを米国は望んでいる。なぜなら、そもそも釣魚島問題は米国が中日間に埋めた“地雷”であるからだ。米国は中日が歩み寄り、まして両国がともに「東アジア共同体」を推し進めることは望んでいない。中日間のある一定程度の緊迫感が、米国がアジアでの軍事プレゼンスを強化するための“十分な理由”となっているのだ。よって日米同盟の“盟主”である米国が、中日関係の事実上の“采配者”であり“調温師”である。歩み寄れるかどうかは、安倍氏の意向と米国の政策によって決まりそうだ。
最後に、改善するかどうかについて、2006年10月、安倍首相が初めて首相に就任し、「氷を砕く旅」と呼ばれる訪中を実現し、小泉政権時代に膠着状態に陥っていた中日関係に“改善”が見られた。しかし、安倍政権下での“改善”は現状から見て、もはや期待できない。安倍氏は保守タカ派の政治家。2006年当時の安倍氏は爪を隠したタカであり、2013年は爪をむき出しにしたタカといえる。
この他にも、中日関係が改善されるかどうかは「民族主義的感情を優先する政策」と「経済成長を優先する政策」の競い合いの結果によって決まるという見方もある。安倍氏が国民の支持を得るには、“アベノミクス”を一時的な幻想に終わらせない必要がある。米国の「アジア回帰」に歓喜するのではなく、釣魚島問題を機に中日両国民の感情を刺激するのでもなく、「経済成長を優先する政策」に舵を切らなければならないと安倍氏が真に気づいたとき、中日関係“改善”の糸口が見つかるのかもしれない。(作者は中国社会科学院日本所研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年8月5日