◆中国報道の最前線から届いた非常に貴重な生の声
私は九年前の二〇〇四年、『春華秋實—日中記者交換四十周年の回想』を企画・刊行した。この本は、日中両国の現役または元特派員計四十人が執筆し、日中報道だけでなく、日中関係の歩みも記録した一冊となった。この中で企画・編者として最も力を入れたのは、本の最後に掲載した各報道機関の特派員名簿である。
この四十年間、日中それぞれに派遣された特派員は数百人に上る。私は、彼らが日中両国の相互理解に一番力を尽くしているのではないかと尊敬の念を持ち続けている。しかし残念ながら、彼らの駐在生活や取材、報道については余り知られておらず、名簿さえきちんと残されていなかった。そのため、日中記者交換開始から五十周年にあたる二〇一四年に、記者たちが書いた本をもう一冊作りたいと常に考えていた。
今年六月、加藤隆則・読売新聞中国総局長と初めてお会いした。初対面にも関わらず、同じジャーナリズムの世界で奔走している両国の者同士が、日中対立を一日でも早く打開するために何をすべきか、それぞれの立場から意見を交換し合った。その際、中国報道の第一線におられる加藤さんをはじめとする日本人特派員たちの奮闘ぶりには非常に感心させられた。この会見を機に企画された本書は、前書の延長線上にある日中記者交換開始五十周年に捧げる一冊でもある。
この場を借りて、加藤さんをはじめ、執筆者各位の迅速なご寄稿とご協力に心からお礼を申し上げたい。本書は他に類を見ない一冊であり、記者たちの本音を知り、また、日中対立の打開策を探る上で大いに参考になる一冊であると信じている。
◆「発信力」が持つ対立打開へのヒント