文=中川幸司
大連にて「夏季ダボス会議」が開幕しました。今回のテーマは「イノベーション(中国語では創新)」とのことで、新興国の代表格ともいえる中国にとってはこれからの自国産業発展のための重要なコンセプトであると同時に、日本ならびに産業先進諸国にとってはこれまでの自国産業の歴史的成功要因を分析する良い機会になるのではないかと思います。
しかしながら、イノベーションという現象とはいったい何か、という本質的な質問に対する明確な回答を用意するのは極めて難しいことと言えます。そこで、今回は「夏季ダボス会議」の開催にちなみまして、過去50年の間に飛躍的な産業的発展を遂げた日本を例にとりまして、改めてイノベーションに対する解釈を論点に分けて考察してみたいと思います。
まずは、イノベーションという現象の種類(型・タイプ)について3つ考えます。1つ目は発明家的、2つ目はラボラトリー(研究所)的、そして3つ目はネットワーク的イノベーションです。発明家的イノベーションというのは、エジソンが蓄音機を発明したように、ある個人が唐突に新しい技術を発見するような現象です。ラボラトリー的というのは、今では多くの企業が研究開発部門をもっていますが、そこで組織的に資金を投じられ多くの技術(特許)の積み重ねによりイノベーションが発生することです。そして最後のネットワーク型とは、分業化された組織同士の交流を通じて専門分野に分割されながらも何らかの集合知となり、これがイノベーションを生み出されるということを想定しています。
続いて、個別企業等組織から見た視点としてのイノベーションの源泉を、粗い区分でありますが2つ考えます。1つは「活用(exploitation)」です。これは組織が現在保有している資源(ヒト・モノ・カネ、そしてパートナー、スキル、ノウハウなど)を改めて洗い出し、見つめなおし、組み合わせを変化させ、文字とおり資源をこれまでよりもより一層効率よく活用することを通じてイノベーションをおこすことです。もう1つは「探索(exploration)」です。これは組織が現在保有していない資源を求めて新しく開拓していく工程を示しており、新しい事象に挑戦することでイノベーションをおこすことです。一般的には後者のほうが、リスクが高く、長期に渡り、投資コストが高いのですが、「活用」よりもイノベーションを起こしやすいとも言われます。
中川コージのブログ『情熱的な羅針盤』