文=黄星原トリニダード・ トバゴ駐在大使
早稲田大学大学院に通う娘が、私によくこんなことを質問する。ふだん交流する日本人の多くは友好的で、安倍首相も日本で歓迎されているが、なぜ中国は日本が右傾化しているとばかり言うのだろうか?元防衛相の石破茂幹事長は、中日のシンクタンクのフォーラムで、筆者にこう聞いたことがある。日本は戦後数十年間に渡り平和の道を歩んできたが、なぜ中国はいつも日本が軍国主義を復活させようとしていると言うのか?日本のテレビ番組の司会者である田原総一朗氏も、筆者にこう聞いたことがある。中日関係は荒波を経てようやく好転し始めたのに、なぜ今になりまた嵐が吹き荒れているのか?
日本の右傾化問題については、中国が口にしたことではなく、自身の行為によって示されたものだ。25年前、筆者が初めて大阪で勤務していたとき、日本の右翼分子が中国駐大阪総領事館の前でもめごとを起こしていた。事務所主任であった筆者は当時、現地政府や警察側と頻繁に話し合い、時には右翼のリーダーと「対話」したこともある。しかし当時の彼らは規則正しく、日本人に変人扱いされて孤立していた。
しかし今日の右翼の活動はまさにのさばり放題であり、当初は大声で叫んでいたのが、大使館のドアを破り火炎瓶を投げるまでに至った。問題は右翼団体による最近のデモ活動に、多くの一般人が参加していることだ。日本の右翼の主張がより多くの同情・支持を得たのだろうか、それとも日本経済の長期的な低迷により日本国民がストレス発散の機会を欲したのだろうか?
次は日本メディアを見ていこう。仕事の関係で、筆者は日本メディアと十年以上付き合ってきた。一貫して右寄りの産経新聞はともかく、長期的に中立・公正を標榜してきた読売新聞やNHKに至るまで、過激な言論を頻繁に発表するようになった。もしくは一部の極右的な観点を持つ政治家や専門家をそそのかし、放任し、公共のメディアを私物化させ、暴言を吐かせている。筆者が右寄りだと思っていたある日本人記者が最近、筆者に次の衝撃的な発言をしたのも無理はない。彼は今日本で、時代の流れについていけない少数の親中派だと、同僚から批判されたというのだ。
さらに日本の政治家の、問題発言と問題参拝について見ていこう。かつて言行に問題があるとされていた指導者は、外交問題により引責辞任を余儀なくされていたが、今や支持率アップのチャンスになっているのだ。他にも教科書問題があるが、世界で批判の声が年々増加しているにも関わらず、戦争を美化した教科書の採用率が年々上昇しているのだ。一国で右翼団体と右翼首相、右翼メディアと右翼教材が歓迎されるならば、この国が右傾化していないと言えるだろうか?