蟻族(高学歴だが良い給料の職を手にできない若年層)が中国社会で広く注目されたが、このような現象は中国だけではなく世界にも存在する。筆者は2007年から研究チームを率い、中国の現代の若者が抱える問題を研究した。『蟻族』が出版されると、海外からも注目を浴びた。日本は『蟻族』の版権を最も早く取得した国だ。
『蟻族』(日本の書名は『蟻族―高学歴ワーキングプアたちの群れ』)は2010年9月に、勉誠出版から出版された。訳者は有名な中国問題専門家の関根謙教授だ。関根教授は1951年に福島県に生まれ、現在は慶応大学文学部長に就任している。本書には中国問題専門家、東京大学社会学部の加々美光行教授が解説を寄せている。本書が日本の読者の間で好評を博したのは、関根教授ら長期に渡り中国に注目してきた日本人学者の貢献の他にも、何か深い理由があるのかもしれない。
デイリー・テレグラフ紙によると、東京在住のある男性、5平方メートル未満で家賃が145英ポンドの部屋で暮らしているという。この男性は細々した日用品に埋もれて暮らしており、名実相伴う蟻族になっている。東京には少なくとも1万人のホームレスが存在するという。この1万人には、カプセルホテルの宿泊者のような、ホームレスの予備軍が含まれない。また多くの人は金銭面の都合により、24時間のネットカフェやスーパー銭湯で夜を越さなければならない。
日本社会にも近年、高学歴の低所得者層が存在し、中国の蟻族の現象は日本にとっても馴染みがある。高学歴の低所得者層という集団は、中日の社会に共通する社会現象だ。より深く分析すれば、蟻族の裏にある、両国が共に直面する時代的・構造的な問題が見えてくるだろう。
高齢化社会により、日本の若者は重い負担を強いられており、未来の生活を強く懸念している。中国の高齢化は日本ほど深刻ではないが、富を築かないうちに高齢者になるという懸念が、社会のホットな話題になっている。中国の高齢者数は2013年に2億人の大台を突破し、高齢化率も14.8%に達した。中国の高齢化は加速を続け、21世紀中頃に高齢化のピークに達する。60歳以上の高齢者が4億人超になり、総人口の30%以上を占める見通しだ。中国の若い世代も、強い圧力に直面している。この問題があり、中国と日本の若者には似通った点が存在している。