一時期、爆竹についていろいろ規制が設けられたことがあるが、その後、また規制がいくらか緩和されて、ガソリン・スタンド、病院、学校などの付近では規制されているが、一般の住民区ではまるで映画の市街戦のような炸裂音が続く。私は文筆業を生業とするものなので、爆竹で目をやられてはたいへんなので、「君子危うきに近づかず」で、自分で楽しんだことはないが、いつも新聞で眼球を摘出した人の話などを見て、こんなに危ないことはないと思っているが、除夜になると若者たちが露地や街角にくり出して、ドカン、ドカンとやっているのを見て、習俗というものは恐ろしいものだと思っている。この炸裂音を耳にしないと、正月気分になれないのだから、われわれのバイオリズムそのものがそうなってしまっているのかも知れない。
仕事でなが年日本に滞在したときも、正月に爆竹の音がないので、なにかノイローゼ気味になっている自分に気づき、結局は体そのものがすでにこの習俗に慣れてしまっているのではないかと思ったりしていた。